2018 Fiscal Year Research-status Report
iPS細胞から成熟オリゴデンドロサイトへの分化誘導法の確立と髄鞘再生治療への応用
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17K07120
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
今村 宰 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 准教授 (40534954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀧嶋 邦夫 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生化学, 教授 (50531365) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ドネペジル / オリゴデンドロサイト / 神経幹細胞 / エストロゲン受容体 / 脱髄疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでにマウス大脳皮質由来神経幹細胞のオリゴデンドロサイトへの分化能を指標とした既存薬のスクリーニングにより、アルツハイマー病治療薬として認可されているドネペジルを同定している。本年度はマウスiPS細胞からSFEBq法を用いて分化誘導した神経幹細胞(miPSC-NSC)を用いてオリゴデンドロサイト分化におけるドネペジルの新規作用メカニズムを明らかにすることを目的とした。ドネペジルが分化に影響を及ぼす細胞内シグナル伝達経路をルシフェラーゼアッセイにより検討した結果、ドネペジルはエストロゲン応答配列(ERE)を含んだレポーター遺伝子の転写活性を顕著に上昇させることが分かった。EREは核内に存在するエストロゲン受容体(ERα/ERβ)により制御されることが知られている。miPSC-NSCにおけるERsの発現を蛍光免疫染色で調べたところ、ERαおよびERβは主として核に局在していた。また、miPSC-NSCをドネペジル存在下に分化誘導すると、ERαおよびERβの発現亢進が認められ、これらの発現細胞の殆どがオリゴデンドロサイトであることを分化マーカー(Tuj1、GFAP、MBP)との多重染色にて明らかにした。さらに、ドネペジル添加で見られたオリゴデンドロサイトの分化促進およびミエリン関連遺伝子(MAG, MBP)の発現上昇はER特異的アンタゴニストであるICI 182,780の前処理により濃度依存的に阻害された。以上の結果より、ドネペジルによるmiPSC-NSCからオリゴデンドロサイトへの分化促進作用にはERを介するシグナル伝達経路が重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドネペジルによる神経幹細胞のオリゴデンドロサイトへの分化誘導機序の一端としてERシグナル伝達経路の関与を明らかにすることができた。ERシグナル伝達経路はオリゴデンドロサイト分化において重要な役割を果たすとともに、再髄鞘化への関与が報告されているため、今後の研究計画を遂行する上で重要な基礎的知見が得られたと言える。一方で、ヒトiPS細胞に対するドネペジルの有効性については、ヒトiPS細胞から成熟オリゴデンドロサイトへ分化誘導させる条件設定に時間を要したため、現在検討中である。以上より、概ね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ERαおよびERβ特異的なアンタゴニストやsiRNAによるノックダウンを用いてドネペジルによるオリゴデンドロサイト分化促進作用におけるERアイソフォームの役割を明らかにする。ドネペジルは神経幹細胞からニューロンへの分化促進作用およびアストロサイトへの分化抑制作用を有することから、次年度ではこれらの作用にERシグナル伝達経路が関与しているか検討する。また、マウスiPS細胞から得られた基礎的知見をヒトiPS細胞に適応し、ドネペジルおよびERアゴニスト・アンタゴニストがヒトiPS細胞由来神経幹細胞やオリゴデンドロサイト前駆細胞に与える影響について検討するとともに、ドネペジルを用いた効率的なオリゴデンドロサイト分化誘導系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
繰越金が生じたのは、当初計画で見込んだよりも安価に試薬・消耗品等の購入ができたためである。繰越金は次年度の助成金と合わせて、試薬・消耗品等の購入および学会出張費、論文発表に必要な英文添削費用に使用する予定である。
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