2017 Fiscal Year Research-status Report
恐怖記憶の消去学習と再固定化に着目したPTSD曝露療法併用薬の開発
Project/Area Number |
17K07125
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
山田 光彦 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所精神薬理研究部, 部長 (60240040)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 顕宜 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 室長 (00366832) [Withdrawn]
山田 美佐 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神薬理研究部, 科研費研究員 (10384182)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 不安性障害 / 曝露療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに、グルタミン酸神経系を調節するリルゾールが、認知機能を障害せず、抗不安作用を有し、恐怖条件付け試験において消去学習を促進することを報告した。本研究では、リルゾールの恐怖記憶の再固定化に対する作用を明らかとすることを目的とした。 初年度である29年度は、リルゾールの再固定化への影響を以下の文脈的恐怖条件付け試験により検討した。1日目に文脈的恐怖条件付けを行い、2日目にチャンバーへ3分間再曝露し、直後にリルゾールを皮下投与した。3日目あるいは28日目の評価日に、チャンバーへ再曝露し、すくみ行動を10分間観察した。その結果、リルゾール(3 mg/kg)は3日目の評価日のすくみ行動を有意に阻害したことから、リルゾールが恐怖記憶の再固定化を阻害する可能性が示唆された。さらに、投与28日後においても、すくみ行動は対照群と比較して有意に抑制されており自発的に回復しなかったことから、リルゾールが恐怖記憶の再固定化を阻害することが強く示唆された。また、再曝露によりラット背側海馬で増加したCREBのリン酸化はリルゾール投与によって有意に抑制されたことから、リルゾールが恐怖記憶の再固定化を阻害することが確実に明らかとなり、さらに、リルゾール再固定化阻害作用には背側海馬の機能変化が関与している可能性が考えられた。そこで、再曝露直後にリルゾールを背側海馬に局所投与した結果、3日目のすくみ行動が有意に阻害されたことから、背側海馬の機能変化が関与していることが明らかとなった。 以上のことから、リルゾールは恐怖記憶再固定化阻害作用を有することが明らかとなった。また、リルゾールがPTSD曝露療法併用薬となりうる可能性が考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
初年度である本年度は、リルゾールが恐怖記憶再固定化を阻害する可能性を示しただけでなく、恐怖記憶の自発的回復が起こらないこと、再曝露により増加した背側海馬における転写因子CREBのリン酸化をリルゾールが抑制したことから、確定的に明らかにすることができた。さらに、背側海馬の機能変化が関与している可能性を、局所投与を行うことにより明らかににすることができた。これらの結果は、欧文誌に投稿し受理されたことから(Neuropharmacology 131:1-10, 2018)、「予想以上に進展している」と考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
実際のPTSD曝露療法では、恐怖体験から時間が経過した後に受診がなされ治療が施されることがほとんどである。そこで、本年度に用いた文脈的恐怖条件付け試験を用いて、臨床に沿ったタイムスケジュールで検討を行う計画である。 リルゾールは、in vitroにおける検討で、グルタミン酸トランスポーター(GLASTおよびGLT1)の抑制、非競合的NMDA受容体及びカイニン酸受容体拮抗作用、電位依存性K+チャネルや電位依存性Ca2+チャネルの遮断作用、AMPA受容体のリン酸化および膜輸送の促進による受容体伝達の亢進作用、電位依存性Na+チャネルに高い親和性を示し、Na+チャネルを遮断することでグルタミン酸放出を抑制させる等、グルタミン酸受容体神経伝達に対する複数の作用が明らかになっている。そこで、リルゾールの消去学習促進、再固定化阻害の分子メカニズムを明らかにすることを計画している。
|
Causes of Carryover |
動物実験室、行動実験の器具の使用予定が他の研究者と重なり、搬入を遅らせる必要があったため、次年度使用額が生じた。次年度、直ちに動物実験室、行動実験の器具の使用が可能であることが確認できたので、翌年度分として請求した助成金と併せて使用する。
|
Research Products
(3 results)