2017 Fiscal Year Research-status Report
生息域外保全による遺伝的劣化を防止する指針提示-野生絶滅種コシガヤホシクサを例に
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17K07275
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
田中 法生 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究主幹 (10311143)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 近交弱勢 / 生息域外保全 / 野生絶滅種 / 水生植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
野生絶滅種コシガヤホシクサ(ホシクサ科)では,1995年の野生絶滅以降,生息域外でのみ個体群が維持されてきた.これまでに,本種の生息域外保全環境下では,送粉者の制限などにより自殖が促進される傾向にあることが明らかになった.さらに,種子重量および水中環境での生存などにおいて近交弱勢の影響が検出された.また,栽培個体群の形質が元の野生個体群と分化する例が複数の植物種で報告されており,水中と湿地上いずれでも生育が可能な本種においては,栽培環境(水中または湿地)の均一化が,野生復帰地における適応度の低下に繋がる可能性がある. そこで本研究では,保全管理下での自家および他家交配と,特定の水位環境に着目し,これらの継続的実施が本種の適応度に与える影響を明らかにすることを目的とした. 交配実験では,2015年から自家および他家交配を繰り返して得られたF2世代の種子を,湿地環境で播種し栽培した.栄養成長期(5-8月)に,発芽個体数,生存個体数,葉枚数,最大葉長,最大ロゼット長を,繁殖期(8-9月)に,花茎数,雄花数,種子期(10月-)には種子数,種子重を計測した.水位環境実験では,湿地,水中,水位変動区を設置した.水位変動区は野生復帰地の環境に準じて,水中環境を基本とし,6月と7月に各1週間湿地環境に変化させた. 交配実験において,これまでに解析の終了した栄養成長期中の計測項目においては,交配様式による差は顕著ではなかった.F1世代における先行研究の結果では,最大葉長や葉枚数は自家交配で有意な差が示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
栽培試験に関しては、おおむね順調に進行しているが、遺伝解析において、Mig-seq法により検出したデータの加工と解析作業に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝解析のMig-seq法により検出したデータの加工と解析作業に時間を要しているため、解析方法の見直しなどにより、改善を図る予定である。 その他については、当初の計画通りに推進する予定である。
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