2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07285
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小川 英知 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授(常勤) (20370132)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 転写制御 / タンパク質複合体 / オートファジー / 翻訳後修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は外的シグナルを受け取り,必要な遺伝子の転写を行うことで,細胞分化や恒常性維持を厳密に制御している。近年オートファジーには,単なるアミノ酸確保の為のタンパク質分解だけではなく,環境シグナルに応答し遺伝子の転写を制御する「選択的オートファジー」が存在することが明らかとなった。本研究では選択的オートファジーのレセプターであるp62に関して,核内での機能を解析することによりオートファジーと転写制御機構を融合し理解する。これにより細胞が飢餓などの外的環境に応答し遺伝子発現を制御する新規の分子機構の存在を明らかにする。初年度はp62の翻訳後修飾の変化に着目し核移行および核内複合体形成の制御を解明することを目的とした。これまでの実験からp62は細胞環境が変化することで,カルボキシル末端のUBA domainのユビキチン結合活性を制御するS403のリン酸化が起きる事を明らかにしてきた。このUBA domainには,ARIP4もまったく同様の結合様式で結合する事から,このリン酸化は,ユビキチン化タンパク質のみならず,核内でARIP4との相互作用の調節もできると考えられる。つまりp62の核内複合体形成において重要な翻訳後修飾であると考えられた。そこでS403のリン酸化を特異的に認識する抗体を作製した。この抗体を用いてp62のリン酸化を検出した結果,マウスの初代培養細胞などでは,このリン酸化は定常状態で殆ど検出できないが,細胞に刺激を与えることによって急激にリン酸化フォームが増加することが判明した。興味深いことにある種の癌細胞では常にこのリン酸化状態が維持されており,p62が細胞外シグナルに応答するだけで無く,癌細胞のような細胞増殖や代謝経路の異常も検知し,細胞内の状態を認識し反応することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
来年度,選択的オートファジーのレセプターp62の核内での機能解析をするために,本年度は予備的に様々な条件下でp62複合体の精製を行った。現状では2種類の細胞において,3つの条件下での複合体の精製に成功している。すでにこれらの複合体に関しては,電気泳動によるバンドの分離を行わず網羅的な質量分析による解析を行い,それぞれの条件下で複合体の構成因子が大きく変化することを発見している。またp62の翻訳後修飾が複合体において変化することも確認している。これらはp62が細胞外シグナルに応答する状況下において複合体の構成因子を変更し様々な細胞内機能を果たしていることを意味している。特にp62は核移行すると核内でドット上の核内構造体に共局在することが知られているが,今回精製した核内複合体の構成因子には,核内で小構造体を形成することが知られている因子が複数含まれており,核内での複合体形成とそれらが働く核内での微小空間の形成がリンクしている可能性が示唆された。これらはp62の機能を理解する上で,構成因子による機能の予測と共に,核内の構造体形成の意義について解明する手掛かりとなると考えられる。 このようにp62の生化学的な解析においては概ね順調に発展しており,また来年度の研究遂行に対して十分な準備ができていていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の複合体の粗精製の結果から,p62は特定の細胞内状態において複数の複合体を形成している可能性が示唆された。これまでの網羅的な構成因子の同定だけではこれら複数の複合体を個別に同定する事は困難であるために,来年度はそれぞれの複合体を精製のステップを増やすことで分離し,個々の複合体について,その構成因子とp62の翻訳後修飾の変化等について解析を進める。付加する精製のステップについては試行錯誤が必要だが,グリセロール濃度勾配またはゲル濾過カラム等の分子量によって複合体を分離するか,特徴的な構成因子を認識する特異抗体を用いた相互免疫沈降精製を行う。精製度に関してはp62の翻訳後修飾の抗体と構成因子の抗体を用いて複合体の状態をモニターしながら条件を設定する。個々の複合体は電気泳動によってバンドパターンとして区別し,それぞれのバンドを質量分析において同定する。同定された因子について,特に重要な新規因子については抗体を作製し,p62と共にクロマチン上への結合を検討する。
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Causes of Carryover |
p62の抗体作製において,抗体価が上がらなかったことを想定して予備的に予算を準備していたが,予定通りに特異性の高い抗体を得ることができたため,来年度のタンパク質複合体の構成因子同定の為の消耗品として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)