2019 Fiscal Year Research-status Report
凝集誘起発光イメージングで「観る」プリオンタンパク質オリゴマーの形成・伝播機構
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17K07315
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Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 典史 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (30452163)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島崎 俊明 千葉工業大学, 工学部, 准教授 (10452476) [Withdrawn]
鎌足 雄司 岐阜大学, 研究推進・社会連携機構, 助教 (70342772)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 凝集誘起発光 / プリオン病 / アミロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
プリオン病はプリオンタンパク質(PrP)が異常重合し脳内に凝集体が蓄積することで発症するが,その感染・発症機構は不明である.従来,多数のPrPが凝集したアミロイド線維の沈着が病態の中心だと考えられてきたが,近年,少数のPrPが重合したオリゴマーがより強い細胞毒性と感染性を持ち,プリオン病病態機序で中心的な役割を果たすという説が有力である.しかし従来の方法ではPrPオリゴマーを可視化することはできない.本研究では,PrPオリゴマーの動態を生きた細胞内で「観る」ため,抗プリオン化合物と凝集誘起発光(Aggregation Induced Emission; AIE)色素を融合した新しい蛍光プローブを開発し,AIEイメージングを用いてプリオン病とPrPオリゴマーの因果関係を解析する.本研究で得られる成果はプリオン病の診断・治療法開発への貢献が期待できる. 本研究はAIE現象を利用してタンパク質凝集体の分子イメージング技術を確立するものであり,AIEメカニズムの理解が不可欠である.令和元年度は,昨年度に引き続き,タンパク質凝集体の分子イメージング技術を確立するための基礎として,代表的なAIE分子であるシアノスチルベン誘導体 CN-MBE および diphenyldibenzofulvene(DPDBF)の発光メカニズムについて,分子シミュレーションを用いた理論的解析に取り組んだ.その結果,AIE現象を利用した分子設計をおこなうための基礎として,自由エネルギープロファイルに基づいて凝集相における AIE 分子 の励起状態緩和過程を明らかにするための手法を確立することに成功した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度末,分担者のひとりが民間企業に転職し,本プロジェクトを離任した。離任した分担者が担っていた凝集誘起発光分子の合成は完了していたが,測定に際して化合物の溶解度を改良する必要が生じた。この改良は当初は離任した分担者が行う予定であったが,別の分担者が担うこととなり,準備などに時間を要することとなった。このため,計画がやや遅れている。現在までに,上記の化合物改良は完了し,次の蛍光測定を遂行しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,「PrPを特異的に標識する(他の生体分子には結合しない・結合しにくい)選択的結合性」と「結合したタンパク質同士が凝集する場合にのみ蛍光性がオンとなる凝集誘起発光性」を併せ持つPrP凝集体プローブとして設計した TPE-Treha を合成し,水・THF混合溶液中における蛍光測定など,AIE特性についての物性評価をおこなった.その結果,TPE-Trehaが水・THF混合溶液中において顕著なAIE特性を示すことから,PrP凝集体を選択的・高感度に分子イメージングするための蛍光プローブとして有望なシードであることが検証実験により明らかになった.2020年度は,2019度中に分子シミュレーションを用いて理論的に解析した DPDBF を骨格構造として,凝集体プローブとしてのPrP結合能・AIE特性を向上させるためのモデル分子を設計する.具体的には,DBDBF のAIEメカニズムの解析結果に基づき,「PrPを特異的に標識する選択的結合性」と「結合したタンパク質同士が凝集する場合にのみ蛍光性がオンとなる凝集誘起発光性」を併せ持つPrP 凝集体プローブを合成し,物性評価をおこなう予定である.今後,TPE-Trehaおよび新規分子を用いて確立したAIEイメージング技術を用いてPrPオリゴマーの蛍光測定をおこない,その動態を明らかにする.
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Causes of Carryover |
2019年度の予算案では,シード化合物の有機合成のための費用および実験補助のアルバイト費用を主に計上していたが,合成を担当していた分担者が離任することで生じた遅れのために,当初予定していた化合物合成に着手するまでには至らず,次年度使用額が生じることとなった.2019年度に開発したシード化合物の場合,PrPへの選択的結合性が低いため,今後,この性質を向上させるための最適化が課題となる.2020年度は,本研究目的を達成するためにこのシード化合物の最適化を別の分担者が担当することを計画しており,設計・合成・検証・相互作用解析のための費用が当初の予算案を超過すると考えられることから,上記未使用分を合わせた予算計画として再検討することで,効率的に研究を遂行することを予定している.
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Research Products
(2 results)