2017 Fiscal Year Research-status Report
上皮管腔形成におけるRacGAP因子FilGAPの機能解析
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17K07390
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
太田 安隆 北里大学, 理学部, 教授 (90192517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 弘次 北里大学, 理学部, 助教 (50569853)
斉藤 康二 北里大学, 理学部, 助教 (70556901)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 細胞間相互作用 / small GTPase / Rho / Rac / 細胞運動 / 細胞接着 / 細胞骨格 / シグナル伝達 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)HGF添加によるMDCK細胞の管腔構造の形成過程のどのステップにFilGAPが係っているか明らかにした。嚢胞にHGFを添加すると、嚢胞から突起の形成、細胞鎖の形成を経て、内腔をもった管腔が形成される。そこで、FilGAPがROCKの下流でどのステップに関与しているか恒常活性化型変異体FilGAP ST/Dを発現させた細胞でできた嚢胞にHGFを添加しROCK阻害剤の効果を検討したところ、FilGAP ST/Dは、突起形成を抑制したが、それ以降の管腔構造を安定化することが明らかになった。 2)FilGAP ST/Dを発現させたMDCK細胞が形成する管腔構造の特徴を詳細に解析した。FilGAP ST/Dはコントロールに比べて長い管腔を形成し、さらに内腔も繋がったものが多いことがわかった。これからFilGAP ST/Dは管腔構造の形成を促進し、成熟を促す働きがあることが明らかになった。更に、タイムラプス顕微鏡観察で解析したところFilGAP ST/Dは細胞の運動速度には影響しないが、細胞運動の方向持続性を上昇させ、細胞の集団遊走を促進させることがわかった。 3)ROCK阻害剤存在化での管腔形成のタイムラプス顕微鏡による解析を行った。嚢胞にHGF添加し管腔を形成させ48時間後にROCK阻害剤を加え、管腔形成に与える影響を詳細に解析した。その結果、ROCK阻害剤を加えないものでは、コントロール細胞、FilGAP ST/D発現細胞ともに管腔から離脱する細胞は50%以下なのに対して、ROCKを加えるとコントロール細胞では、80%程度の細胞が管腔から離脱するのに対して、FilGAP ST/D発現細胞では40%程度の細胞しか離脱しないことがわかった。また、タイムラプス顕微鏡観察からROCK阻害剤は、細胞間の接着を阻害することで細胞が離脱することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
管腔形成におけるFilGAPが果たしている役割は、タイムラプスによる顕微鏡観察で重要なことが明らかになった。即ちFilGAPは、Rho/ROCKシグナルの下流で細胞接着の安定化と一定の方向に動く細胞運動の持続性を促進させることが明らかになった。現在までの知見は、2017年度に複数の学会で報告した。現在までの知見をもとに論文投稿の準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、FilGAPの管腔構造の形成における役割を分子レベルで明らかにする予定である。特に細胞間相互作用に重要で、管腔構造の形成にも関わっているE-カドヘリンとFilGAPの関係を解析する。具体的には、管腔形成の後期におけるE-カドヘリンの局在を間接傾向抗体法で検討し、この局在がROCKの阻害剤で影響を受けるか検討する。更に、恒常活性化型FilGAP ST/D 変異体を発現させた細胞でのE-カドヘリンの局在がROCK阻害剤でどのように変化するか調べる。また、FilGAPのリン酸化がHGFの添加により細胞内で変化するか抗リン酸化FilGAP抗体を用いて間接傾向抗体法及びウエスタンブロット法で検討する。
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