2017 Fiscal Year Research-status Report
Non-centrosomal microtubules that control the structure and function of kidney tubules
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17K07397
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
戸谷 美夏 早稲田大学, 理工学術院, 講師(任期付) (80455360)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 上皮細胞 / 微小管編成 / 腎臓 / 嚢胞腎 / 微小管マイナス端 / CAMSAP3/Nezha / ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮細胞は、多くの臓器を構成する主要な細胞で、分泌や吸収、外界とのバリアなど、生体内で重要な役割を果たしている。その構造は、頂端―基底という極性をもつ。上皮細胞内で微小管細胞骨格は、頂端―基底軸に沿うように、一定の方向性をもって配向する特徴的な編成を示す。この特徴的な微小管編成は、上皮細胞が正しく機能するために重要であると考えられているが、編成の形成機序や、生理的機能については、いまだ多くのことがわかっていない。 我々は、これまでに、腸上皮細胞において、頂端面に局在する微小管マイナス端結合タンパク質CAMSAP3が、上皮に特徴的な微小管編成に必須の因子であることを見いだした。昨年度までの研究から、Camsap3変異マウスにおいて、腎臓の構造異常(多発性の嚢胞腎)が新たにみつかった。本研究課題では、Camsap3変異によって生じる嚢胞腎形成のメカニズムを解明し、CAMSAP3が関わる上皮微小管編成の制御と生体内での役割を明らかにする。平成29年度は、1.組織レベルでの形態変化の解析と、2.生理的機能への影響の検査を行ない、以下の結果を得た。 1.Camsap3変異によって生じる多発性の嚢胞腎は、尿細管の一部である近位尿細管の拡張によることが明らかになった。嚢胞を形成する細胞では、Camsap3変異をもつ腸上皮細胞と同様に、微小管の編成が乱れたが、小腸組織とは異なり、細胞接着部位の微小管は、頂端―基底の配向を保っていた。このことから、小腸上皮と腎臓上皮では、微小管制御が異なることが示唆された。拡張した近位尿細管の細胞には、一次繊毛が存在し、一次繊毛の形成不全が原因とされる多発性嚢胞腎とは異なる機序での嚢胞形成が示唆された。 2.野生型に比べて、Camsap3変異マウスでは、血糖値が高い傾向が見られた。尿サンプルについては、測定値が安定しないため、採尿条件の検討を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理化学研究所CDBから、早稲田大学TWInsへのCamsap3変異マウスを含む研究材料の移転と、実験系のセットアップを行い、ほぼ予定通りに完了した。組織化学的解析、および、生理的機能への影響の検査(尿・血液生化学検査)を、おおむね予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Camsap3変異マウスが嚢胞腎を形成するメカニズムを探る。多発性嚢胞腎が形成される原因として、一次繊毛の形成不全に起因するメカニズムが知られているが、Camsap3変異マウスが形成する嚢胞腎の細胞では、一次繊毛の形成が見られた。この結果は、Camsap3変異マウスでは、既知のものとは異なるメカニズムで、腎嚢胞が形成されると考えられる。今後は、細胞の形態異常があるか(管腔に面する頂端面の面積拡大があるか)、細胞分裂の亢進があるかの解析をおこない、Camsap3変異マウスが嚢胞腎を形成する機構を探る。培養細胞を用いた実験も併用した解析を行う。 2. 昨年度までに、電子顕微鏡観察をおこなっている。野生型とCamsap3変異マウスの尿細管上皮細胞における、細胞内の微細構造の差異を解析し、上皮細胞微小管の未知の役割について、新たな知見を得る。 3. CAMSAP3が関わる上皮微小管編成の生理的機能について明らかにする。尿・血液生化学検査から精度の高い検査値を得るため、サンプル採取の条件を検討し、サンプル数を増やす。尿サンプルについては、採尿方法や時間帯、血清サンプルについては、絶食の有無による血糖値の検討を行う。 4. Camsap3変異マウスは、nullではなく、Camsap3の機能領域である微小管結合部位を欠くCAMSAP3変異タンパク質を発現している。このため、現在、Camsap3遺伝子領域を完全に欠失させた、Camsap3 nullマウスを、理化学研究所BDRとの共同開発で新たに作出中である。Camsap3 nullマウスの作出・確認作業を継続し、表現型の確認を行う。
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Causes of Carryover |
Camsap3変異マウスは、繁殖を行いながら、目的の週齢のマウスを用いて実験を進めている。実験は継続して行っており、限られたスペースで繁殖を行っている。実験に用いることができる変異マウスの数は、交配の確率、得られる仔マウスの遺伝子型などの影響をうけるため、作製するサンプルの数や時期が前後し、予算の使用時期にも前後が生じる。このため、マウスの飼育管理費用、血液・尿検査用の費用、組織化学試料作成のための試薬、ミクロトームなど学内設備使用料など、継続使用している費用が繰越となった。平成30年度に上記の項目で、使用の予定。
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