2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07421
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
柴田 典人 津山工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (60402781)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 全能性幹細胞 / プラナリア / ニッチ |
Outline of Annual Research Achievements |
幹細胞の分化全能性の維持機構を細胞、分子レベルで理解することは再生医療といった応用面だけでなく、分子機構の種を超えた普遍性など基礎的な生物の理解のためにも非常に重要である。幹細胞の維持に関係するものとしてニッチと呼ばれる細胞外基質が知られている。哺乳類では全ての細胞に分化できる全能性を発揮する内部細胞は、発生過程の初期に一過的に見られる。この内部細胞塊に由来するES細胞の維持には細胞接着因子であるE カドヘリンが関与していることが知られているが、数十年にわたってES 細胞を全能性のまま培養し続けられるかに関しては全く未知である。さらに他の生物における分化全能性幹細胞の維持機構はほとんど報告がない。 扁形動物に属するプラナリアは、成体においても分化全能性幹細胞(新生細胞)を維持し続け、これを腫瘍化することなく適切に調節・利用して高い再生能力を発揮することが知られている。我々が使用しているプラナリアは1991年に採集された1匹のプラナリアを無性生殖によって維持されているクローン系統である。これは27年間にわたり全能性幹細胞を維持し続けていることを示しており、プラナリアには強固な全能性幹細胞維持機構が備わっていることを強く示唆している。 我々は、我々は哺乳類において腫瘍の転移能の獲得に関与するM T A 1(Metastatic Tumor Antigen)のプラナリア相同遺伝子(DjMTA-A、B)が新生細胞で発現され、細胞の接着性を制御することで、新生細胞の維持に関与していることを見出した。今年度はDjMTA-A、BのRNA干渉法(RNAi)による機能阻害個体の網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、レクチンなどの細胞接着に関与する分子を含む多くの遺伝子がDjMTA-A、Bによる幹細胞の制御に関与している可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度はコントロール個体、DjMTA-A、Bの機能阻害個体を作成し、RNAを生成し、フィルジェン株式会社に発注してRNA-seq解析を行った。その結果、Cタイプレクチンの発現低下や、新生細胞の細胞周期に関係するP2X-Aの発現低下など、興味深い結果が得られた。現在、これらの候補遺伝子に関して解析中であり、研究活動は概ね順調に進捗していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
他の生物の結果から、ニッチ分子を機能阻害すると、真の新生細胞が著しく減少し、分化型の新生細胞が優位に存在するようになる事が予想される。そこで、真の新生細胞の分子的実体を明らかにするために、DjMTA-A、-B の機能阻害個体とニッチ分子機能阻害個体の遺伝子発現の比較をRNA-seq によっておこなう。個体を用いた解析で、うまく差異が認められない場合FACS によって精製した新生細胞を試料として用いる。さらにシングルセルRNA-seq による真の新生細胞と分化に向かう新生細胞の網羅的遺伝子発現解析を通じ、それぞれの細胞の持つ特性を検討する。さらに真の新生細胞の体内局在の解析や、RNAi による特異的遺伝子の機能阻害によってプラナリアの真の新生細胞を起点とした幹細胞システムの時空間的な階層性を理解する。研究は京都大学大学院理学研究科博士後期課程2 年の佐藤勇輝氏を研究協力者とする。
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