2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07421
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
柴田 典人 津山工業高等専門学校, 総合理工学科, 准教授 (60402781)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 幹細胞 / 再生 / プラナリア |
Outline of Annual Research Achievements |
プラナリアは高い再生能力を持つことで古くから研究対象として注目されていた。近年の研究から、この再生能力は身体中に存在する分化全能性幹細胞である新生細胞に依存していることが明らかとなってきた。脊椎動物などでは、発生初期のごく限られた期間にのみ分化全能性幹細胞は出現し、この細胞に由来するES細胞を成体に移植しても腫瘍化してしまう。一方、プラナリアは成体であっても身体中に新生細胞を維持し、腫瘍化することなく再生過程や組織の恒常性において分化細胞を供給し続けている。本研究では、なぜプラナリアは成体であっても全能性幹細胞を維持し続けられるのか、について、新生細胞を取り巻く外的要因と新生細胞自身の内的要因の両方向からアプローチする。 本研究では哺乳類の腫瘍の転移に関与するMTA1(Metastatic Tumor Antigen 1)のプラナリア相同遺伝子に着目し、機能阻害個体での遺伝子発現の変動を確認した。その結果、細胞接着やギャップジャンクションに関係する遺伝子に変動が見られた。近縁種のデータセットを使用して、シングルセル解析を行ったところ、ギャップジャンクションに関係するINX-Bがコミットメントを受けていない新生細胞で多く発現されていることを示唆することができた。INX-BがMTAの下流で働いている可能性があることから、新生細胞の移動に関して詳細に観察した。その結果、日本産のDugesia japonicaとヨーロッパ産のSchmidtea mediterraneaでは個体内の新生細胞の移動性に違いがあり、細胞の移動にERKシグナルが関与していることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度、RNA-seqによって得られたプラナリアMTA-A、B遺伝子の下流候補遺伝子を、近縁種であるSchmidtea mediterraneaのデータベースを用いてシングルセル発現解析を行った。さらに、MTA-A、B遺伝子と、その下流候補遺伝子のINX-Bが細胞移動に関係することが期待されるため、Dugesia japonicaとSchmidtea mediterraneaの新生細胞の移動様式を比較検討し、相違点を明らかにした。特に移動制御にERKシグナルが重要であること、ERKの活性化が種によって異なることを明らかにした。このように、新生細胞の移動とプラナリアMTA相同遺伝子の関係を明らかにするための研究基盤を整備することができ、進捗状況としては概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
MTA-A、B遺伝子と、その下流で働くことが予想されるP2X-A遺伝子、INX-B遺伝子との関係性を二重のRNAi法によって明らかにする。特に細胞の移動性の獲得、消失を指標にMTA-A、B遺伝子RNAi個体における新生細胞の状態に着目して解析する。MTA-A、B遺伝子RNAi個体における新生細胞は細胞分化が抑制された状態だと考えられるので、昨年度報告された近縁種のSchmidtea mediterraneaで報告された新生細胞マーカー遺伝子等も利用していく予定である。得られた結果を本年度、論文として公表する予定である。
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Causes of Carryover |
初年度のRNA-seq解析によって、精度の高いデータが得られたため、当該年度に予定していたRNA-seq解析、特にシングルセルレベルでの解析が必要ではなくなったため、次年度使用額が生じた。本年度の助成金とともに、研究結果を論文として公表するための英文校正、および出版代として使用する予定である。
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