2018 Fiscal Year Research-status Report
サメ類の繁殖内分泌機構の分子基盤の構築と人為産卵促進技術への応用
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17K07472
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
内田 勝久 宮崎大学, 農学部, 教授 (50360508)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森山 俊介 北里大学, 海洋生命科学部, 教授 (50222352)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 比較内分泌学 / 魚類生理学 / 魚類繁殖生理学 / 魚類発生学 |
Outline of Annual Research Achievements |
軟骨魚類は重要な水産資源であるが、混獲などから資源の減少が懸念されている。しかし、軟骨魚類の繁殖保護を図るために必須な繁殖生理・発生学の知見は乏しい。本研究では板鰓類・トラザメを対象種とし、トラザメ卵の卵殻形成過程の詳細な機能形態学的解析と初期発生過程における孵化機構の解明を目的とした。 1.トラザメにおける初期発生過程における孵化機構の解明 卵生動物における発生過程において、孵化は生死に関わる重要なイベントであり、魚類では真骨類においてのみ孵化酵素が同定されてきたが、板鰓類においては未だに同定されていない。卵生の板鰓類の卵は硬い卵殻を有し、プレハッチと呼ばれる時期に卵殻の上・下部が開口し、外界水との接触を高め、発生を効率よく進める。トラザメの発生段階ごとの卵や胚を用い、プレハッチ前の胚を電子顕微鏡等の組織学的解析に供し、頭部に分泌顆粒と粗面小胞体を多数有する特徴を持つ孵化腺様細胞を発見した。次に、孵化酵素産生細胞のみをレーザーマイクロダイセクション法により採取し、次世代シーケンス解析を行った。その結果、システインプロテアーゼに関連する遺伝子2種類が高発現していた。 2.卵殻腺の形態学的観察ならびに分子マーカー遺伝子による機能の類推 トラサメの卵殻腺は組織(化)学的に異なる4つの分泌層から構成され、卵殻腺内で最も広いBaffle zone(Bz)が卵殻形成に主要な働きをもつことが示された。また、Bzよりコラーゲン(col)をコードする遺伝子を同定した。この遺伝子は成熟個体の卵殻腺で高い発現を示し、卵殻腺のBzにのみに発現し、Bz内の上部、中間部、下部において異なる発現強度を示した。このことは、Bzが卵殻の主要成分であるコラーゲン分子の合成に寄与する分泌層であることを強く示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
産卵周期を示すトラザメの入手が困難であり、卵殻腺の機能とホルモンの関わりを解析する研究課題の進行がやや遅れている。国内でトラザメの産卵個体を展示している碧南水族館に協力を得ているが、展示個体をサンプリングしてしまうことはできず、それらの個体が産んだ卵を用いて、卵殻を壊すプレハッチング現象の仕組みについての研究を組み入れ、ある一定の成果を得てる。 現在、トラザメを食用とする韓国の研究者との共同研究体制を構築し、卵殻腺の形成に寄与する生殖関連ホルモンの動態や機能の解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内で産卵周期を示すトラザメの入手が困難は変わらないため、今年度に取り組んだトラザメ胚の卵殻のプレハッチ現象(卵殻を壊す)の仕組みや、孵化酵素の機能についての分子レベルでの研究課題を進めていきたい。 一方、韓国の研究者との共同研究により、卵殻を作る機構や、トラザメにおける生殖関連ホルモンの機能解析を進めたい。現在、我々が同定した生殖関連ペプチドを合成し、成熟周期個体の下垂体との培養実験を試みる予定でいる。
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Causes of Carryover |
平成31年度4月に韓国での共同研究を実施する計画としたため、平成30年度分の使用額の一部を次年度請求助成金と合わせた使用計画とし、研究計画の実態に合わせた使用としたため。
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