2020 Fiscal Year Research-status Report
網羅的ゲノム比較解析による共生的窒素固定系の起源と進化原理の解明
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17K07509
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
青木 誠志郎 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻, 学術専門職員 (10334301)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 元己 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00193524)
岩崎 渉 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (50545019)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 根粒形成 / 共生窒素固定 / 遺伝子水平伝播 / 協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、その前年までに本研究で見つけることができた、新たな14の根粒共生に関わっている可能性のある遺伝子群の進化過程を、さらに詳しく解析し結果を報告する予定であったが、予想していなかったコロナウィルスによる研究活動への影響のため、解析が遅れてしまった。このため2020年度の後半より、根粒菌のうちAzorhizobium属の1株についてのゲノム配列決定に研究を絞って、解析を行った。この生物株の持つ全タンパク質の配列を決定し分子進化について調べたところ、根粒形成に関わることが知られている共生関連遺伝子の相同遺伝子に、“異常に速い進化速度”という特徴が見つかった。この進化加速は、(1)他の属の根粒菌には見受けられず、かつ(2)Azorhizobiumゲノム内の他の遺伝子群にも見受けられないというもので、つまり「Azorhizobium属の根粒菌」の「共生関連遺伝子」だけに特徴的な現象であることが確認された。さらにこの特徴が、共生関連遺伝子のうちでも根粒形成遺伝子にのみ観察され、窒素固定関連遺伝子には見受けられないことが示された。Azorhizobiumは他の属の根粒菌とは異なり、植物中ではなく土壌中の自由生活においても窒素固定できることが知られており、窒素固定関連遺伝子に他の属の根粒菌にはない独自の進化圧がかかっている可能性が、新たに示された。また、根粒菌の共生関連遺伝子は共生アイランドと呼ばれるゲノム上の繋がった領域に見つかることが知られているが、“異常に速い進化速度”の現象は、共生アイランドのうちの一部だけに見受けられる様子が見つかった。これまでに発表されたAzorhizobium属根粒菌のゲノム解析は2株だけであり未だ情報は少ない。2021年度は3株目としてこの菌のゲノム解析の報告を行い、進化解析を進行させる計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予想していなかった、コロナウィルスによる研究活動への影響のため。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も実験室での解析が難しい可能性があり、そのためこれまでの解析結果をもとに、"研究実績の概要"で記した14遺伝子について、主に分子進化に関わる計算解析を行う。またAzorhizobiumのゲノム情報に関する解析を完成させて、論文として発表する。
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Causes of Carryover |
予想していなかったコロナウィルスによる研究活動への影響のため。今年度も実験室での解析が難しい可能性があり、次年度は主に、これまで結果をもとにしたコンピューターを用いた解析への使用を計画している。
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Research Products
(4 results)