2019 Fiscal Year Research-status Report
Monandry by female genital mutilation and its evolution in orb-web spiders
Project/Area Number |
17K07576
|
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
中田 兼介 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (80331031)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
繁宮 悠介 長崎総合科学大学, 総合情報学部, 准教授 (00399213)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | クモ / 交尾器 / 性選択 / 性的対立 / 対向進化 / コスト / 交尾行動 / 適応度 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続きギンナガゴミグモの交尾(本来は交接が正しいがここでは交尾と表現する)における交尾器破壊頻度と既交尾メスと2個体目のオスの交尾の可否の調査を行った。これまでの結果から、本種の交尾器破壊頻度は42.0%と他種と比べて低く、また38個体の既交尾メスのうち30個体が求愛するオスを攻撃して追い払った。このことから本種では交尾器破壊は起こるものの、メスによる複数オスとの交尾を抑制する役割は小さいことが明らかになった。ミナミノシマゴミグモでも同様の結果が得られており、ゴミグモ属において交尾器破壊が起きるかどうか、また交尾器破壊が起きる場合の機能については種間変異が大きいことが明らかになった。このことは交尾器破壊が父性確保のために進化したのではない可能性を示唆しており重要である。 交尾器破壊で1回交尾となることのメスのコストを、ギンメッキゴミグモを用いて引き続き調べた。1オスから2回挿入を受けた通常交尾メス、2オスから1回ずつ挿入を受けたメス、2オスから合計3回挿入を受けたメスの3つのグループを用い、飼育下で産卵させ、産卵数と孵化率を計測した。その結果、2オスから3回精子を受け渡されたメスの孵化子グモ数は、1オスないし2オスから2回精子を受け渡されたメスよりも約10%多かった。同時にギンメッキゴミグモの雌雄の出会い頻度の推定についても昨年に引き続き観察を続け、3年間の結果をまとめるとオスは平均2.26個体のメスと遭遇したと推定された。遭遇頻度の個体間のばらつきから、複数のオスと交尾する機会を持つメスの割合は全体の約2/3といえ、それによる子グモ増が10%ならば、複数オスと交尾する能力を保持することで得られる利益は交尾器破壊を受容したときと比べて7%程度増えると推測された。これは交尾器破壊への対向戦術が進化するためのコストの上限を示していると考えられ重要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題で昨年度までに完了していなかった、メスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響、と、オスメスの出会い頻度の推定については、本年度に観察を重ねることにより一定の結論を得ることができた。特に重要な観察項目であった産卵数の計測が、昨年度は一部の卵塊がダニに捕食されたため観察数が少なかった部分を今年度は補うことができた。これによって、本計画で計測予定だった項目はおおよそ達成したものと考えている。しかしながら、本年は昨年度までに達成していたギンナガゴミグモの交尾行動の観察を、結果をより確かなものにするべく更に追加で行ったこともあり、全体としてデータを解析し論文等で公表するための時間を十分にとることができなかった。また、本年度の3月に参加する予定だった国内学会がコロナ禍による集会自粛のため中止になったことと(発表は行ったこととされた)、予定していた国際学会が開催時期の都合により参加できなかったことがあり、研究成果の公表のための活動に遅れが生じた。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究成果の公表のための活動を行う予定だが、2020年夏に参加する予定だった国際学会一つと国内学会一つがコロナ禍により既に中止が決定しており、他の国内学会も開催が危ぶまれている。そのため研究成果の公表としては、論文執筆に注力する予定である。また、これまでのメスによる複数オスとの交尾が適応度に与える影響についての実験結果からは、メスの適応度を増やす効果があるのは、複数オスとの交尾ではなく単純に交尾の際に触肢の挿入を受ける回数である可能性が示唆された。そこでこの可能性を検討するため、1オスから1回挿入を受けたところで交尾を中断させたメスと、最後まで交尾を続けさせ2回挿入を受けたメス(通常の交尾では2回挿入が起こる)の2種類を作って、その間の適応度の違いを産卵数と孵化卵数で比較することを予定している。また、オスメスの出会い頻度の推定について、更に観察を増やして推定値の精度をあげることを試みる。
|
Causes of Carryover |
論文執筆に遅れが出たため英文校閲費の支出が予定より少なくなったこと、参加を計画していた国際学会が開催時期の関係で参加できなくなったことから参加費と旅費・交通費の支出が生じなかったこと、3月に開催予定だった国内学会がコロナ禍により中止になり(発表は行ったこととされた)、参加費と旅費・交通費が生じなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。本年度は、夏に国際学会への参加を予定していたが既にその学会も開催中止が決定している。2020年度は論文執筆を重点的に行うので英文校閲費として使用すること、また追加で実験を行うのでそのための物品費として使用すること、さらに観察した動画を解析するために画像解析用コンピューターを購入することを計画している。
|