2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of rapid mapping system, identifing mutant gene loci with the soybean mutant library.
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17K07604
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
渡邊 啓史 佐賀大学, 農学部, 講師 (40425541)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
穴井 豊昭 佐賀大学, 農学部, 教授 (70261774)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ダイズ / 変異遺伝子 / マッピング / 次世代シークエンス解析 / イソフラボン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度作成した次世代シークエンス解析データから取得した、品種間の多型情報から作成したPCR断片の融解温度の差分を最適化したDNAマーカー(Nearest neiboring nucleotide substitution HRM marker: NNNs-HRMマーカー)を用いたマッピングシステムの利用によるイソフラボン変異遺伝子の高速マッピングと変異遺伝子の特定を試みた。 イソフラボン分子種のうち、ゲニステイン含量が増加した変異体(F333ES017D9)と、マロニル化体が減少した表現型を示す変異体(F333ES023F2)について、その変異の原因となるDNA多型を同定した。またダイゼイン系が増加した変異体(F333ES038C1)について、その変異遺伝子のマッピングを行った。F333ES017D9が持つ変異遺伝子は染色体18番の末端に位置づけられた。この変異遺伝子の直接の原因となるDNA多型を同定するために、次世代シークエンス解析を行ったところ、変異遺伝子が座乗する染色体領域に存在する、カルコンリダクターゼ遺伝子の第3エキソンに1bpの欠損を変異体が有することが明らかとなった。この変異を対象にPCRのみで遺伝子型判別が可能なHRM法によるDNAマーカーを作成したところ、当該変異を正確に判別できるマーカーを作出した。 マロニル化体が減少した表現型を示す変異体(F333ES023F2)について、次世代シークエンス解析によって原因遺伝子の同定を試みたところ、変異遺伝子の座乗領域は染色体13番の短腕側に位置づけられ、この領域を対象にした次世代シークエンス解析の結果、マロニルトランスフェラーゼ(Glyma13G06230)にストップコドン変異を有することが明らかとなった。またダイゼイン系が増加する変異体の変異遺伝子は第3番染色体に位置づけられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイズ種子中に含まれるイソフラボンの組成が異なる青黄豆とフクユタカ、球磨地1号とフクユタカの交雑後代を用いたイソフラボン含量のQTL解析によって、染色体11番にマロニルグリシチンの増減に関与する遺伝子座qMgly-11と、染色体15番にマロニルゲニスチンの増減に関与する遺伝子座qMGe-15を同定した。フクユタカ突然変異集団から得られた変異系統と、フクユタカとは遺伝的に由来の異なるトヨシロメとの交雑後代を用いたイソフラボン変異体の変異遺伝子のマッピングについて、マロニル化体が減少した変異体と、ダイゼイン系が減少した変異体、ダイゼイン系が増加した系統を対象に、本課題で構築した高速マッピングシステムの適応が可能かどうか検証した結果、ゲニステイン系、マロニル化体が増加した変異系統については、表現型の原因となる機能多型を同定した。これらの結果は、本課題で構築した高速マッピングシステムとNGS解析の組み合わせが、変異系統や自然変異による特定の遺伝子のマッピングが迅速に実施できるシステムが整ったことを示している。さらに脂肪酸組成に関わる変異体に本課題で開発した手法を適用し、4遺伝子座について、染色体上の位置や変異の原因となる遺伝子を特定している。本課題では当初10遺伝子座について、その座乗領域を同定することを目的として挙げていた。3年間の課題実施期間において、イソフラボン組成関連遺伝子について5遺伝子座、脂肪酸組成に関する4変異遺伝子座、草型に関与する1変異遺伝子座の同定を行っており、目標を十分に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、新規イソフラボン変異系統を対象に同様の手法を用いたマッピングと変異遺伝子の同定を実施している。本課題で構築したシステムは変異遺伝子の同定に非常に有用であることを示した。また本課題で開発した、塩基置換を伴う高解像度融解曲線を用いたDNAマーカー(NNNS-HRMマーカー)は、これまでのHRMマーカーにおける遺伝子型判別の頑健性を高め、実際の育種過程におけるマーカー選抜育種に有用なDNAマーカーを提供する基盤的技術となりうる。これらの成果は今後、変異遺伝子の育種利用を加速するものと期待され、育種プロセスにおける効率化やマーカー選抜の簡略化、世代促進を組みあせた、育種操作に必要な個体数の軽減等と組み合わせることで、新規育種素材の開発を加速することが可能になると期待される。
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Causes of Carryover |
2020年1月より中国武漢で発生した新型コロナウイルスの流行に伴い、中国やシンガポールの企業へ外注していた次世代シークエンス解析のサンプル輸送や解析が滞り、年度内の解析が困難な状況となり、次年度の使用を申請した。繰り越し金の大部分について、外注による解析費用と論文の投稿料等に充当する。
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Research Products
(2 results)