2017 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体耐性菌の耐性機構の解明と新奇微生物プラットフォームの開発
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17K07736
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
倉田 淳志 近畿大学, 農学部, 講師 (10416000)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イオン液体 / Bacillus属細菌 / イオン液体耐性 / 浸透圧ストレス / トラスクリプトミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
親水性イオン液体を溶媒に用いた有用物質の生産技術が注目されているが、親水性イオン液体は酵素を失活させて細菌の生育を阻害するため、親水性イオン液体の利用には困難がある。その困難の克服のため、本研究では独自にイオン液体耐性細菌Bacillus sp. CMW1を発見し、イオン液体耐性酵素を開発している。本研究の目的は、細菌のイオン液体耐性機構を解明して、イオン液体耐性の細菌宿主を開発することである。 現在、グラム陽性細菌のイオン液体耐性機構は不明である。本研究では、独自にBacillus sp. CMW1のゲノムDNA 3.9 Mbpの塩基配列を決定した。その後、アノテーションを行い、タンパク質をコードする遺伝子候補9175 個を見いだしている。さらに、グラム陽性細菌の補償溶質のグリシンやベタインによる浸透圧調節機構が、少なくともイオン液体耐性に関与していることを推定している。 そこで、これらの補償溶質の合成や取り込みに働くタンパク質を含め、イオン液体耐性に関与するタンパク質を網羅的に解析するために、イオン液体[BMIM][Cl]添加・無添加条件下で発現するRNAの解析を試みた。 まず10% [BMIM][Cl]添加・無添 加条件下で本菌株を培養して、それぞれtotal RNAを取得した。次にrRNAを除去してmRNAを得て、cDNAライブラリー を調製した。その後、次世代シーケンサーを用いて塩基配列を解析して、プログラムTopHatとBowtie1を用いて塩基配列を独自に解読したゲノムDNAにマッピングした。プログラムCuffdiffを用いて転写量が変化した遺伝子領域を同定した結果、[BMIM][Cl]添加によって、ストレス応答転写因子、浸透圧調節機構、多剤排出ポンプに関与する遺伝子の増加を確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、親水性イオン液体に耐性を示すBacillus sp. CMW1を用いて、イオン液体添加で転写量が増加する遺伝子群を解析した。その結果、イオン液体への耐性に関与する遺伝子群を同定できた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン液体耐性Bacillus sp. CMW1は、有用酵素を発現可能な細菌宿主としての利用を期待できる。そこで変異処理によるランダムな変異導入ととゲノム情報を利用した合理的な変異導入を用いて、宿主として利用可能な変異株を取得する。続いて、イオン液体耐性Bacillus sp. CMW1での発現ベクターを 構築する。まずBacillus sp. CMW1の薬剤感受性を検討して、プラスミドベクターの選択マーカーに利用できる 抗生物質を決定する。次に代表的な枯草菌ベクターpHY300PLK (4.87 kbp) などを鋳型に新規シャトルベクタ ーを構築する。エレクトロポレーション法等によりBacillus sp. CMW1の形質転換法を確立する。この様に遺伝 子組み換え系を構築する。
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Causes of Carryover |
(理由)RNAの抽出に用いる菌体の取得の作業について、当初の予定より順調に実施できた。 (使用計画)H29年度の細菌の培養費を、H30年度で使用する細菌の培養で使用する。
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