2017 Fiscal Year Research-status Report
Study of emulsion gels with unique texture
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17K07818
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
井倉 則之 九州大学, 農学研究院, 准教授 (30260722)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エマルション / ゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
エマルションは連続相中に異なる極性を有している液滴が分散した系となっていることから、それらに親水性成分と親油性成分のいずれをも内在させることが可能である。そのため、エマルションからのフレーバー成分のリリース挙動は単純な系とは異なることが知られている。またこのようなエマルションをゲル化させることで、従来とは異なる物性を有したゲルを作成可能となる。本申請では連続相にゲル化可能な成分を選択することで、独特な物性ならびにフレーバーリリース能を有した新規エマルションゲルの作成を目的とする。平成29年度は異なる分散相含有率のエマルションならびにエマルションゲルの物性、及びエマルションからのフレーバーリリースについて検討を行った。まず、水溶液中にキャノーラ油を含むエマルションの液滴径分布と流動性について検討を行い、分散相含有率の増加に伴い、そのエマルションゾルの粘度が増加し、さらに液滴径が小さくなるに従いその粘度上昇率が増加することを明らかにした。次いで、連続相として、10%のオボアルブミンを用い、分散相として大豆油を用いたエマルションゲルの物性について検討を行った結果、分散相含有率が高くなるにしたがって、ゲルのかたさは増加する傾向が認められた。一方、凝集率にはあまり影響は及ぼさなかったが、付着性に関しては低下する傾向が認められた。最後に、エマルションゲルからのフレーバーリリース測定の予備実験として、エマルションからのフレーバーリリースについても検討を行った。その結果エマルションの分散相増加に伴い、フレーバーリリース量は減少し、その減少率は香気成分の疎水度が高いほど小さくなる傾向が認められた。以上のことから、エマルションゾルの物性はその液滴径分布に影響を受けることから、そのゲルの物性も変化すること、またフレーバーリリース挙動も影響を受けるであろうことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エマルション中の分散相の濃度ならびに液滴径分布がエマルションゾルの物性に大きく影響を与えることが今回の検討で明らかにすることができた。また分散相濃度の異なるエマルションをゲル化させることによってもその物性に影響を与えることがわかった。今年度、エマルションゾルについては詳細に検討が進んだが、エマルションゲルについてはまだ多くの結果を得られていない。今後さらに検討を進める必要がある。また平成30年度に行う予定にしていたフレーバーリリースについてもその予備的な検討を進めることができ、香気成分の疎水度とエマルションからのフレーバーリリースについての相関を得ることができた。以上のことより、平成29年度はエマルションゲルの物性評価やフレーバーリリース測定についての基礎など多くの知見が得られ、概ね順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度に引き続き、連続相としてタンパク質や多糖類を用い、様々な組成や液滴径分布を有するエマルションを作成し、そのゲル物性について調査を行い、その構造と物性の関係について検討を行う。特に、平成29年度にはあまり進めることのできなかった構造相関について注意深く検討を進める。さらに得られたゲルからのフレーバーリリースについても検討を進める。平成30年度では、様々な組成を有するエマルションゲルについてフレーバーリリースを調査する。その結果を踏まえ、フレーバーリリースの経時的な変化を測定する方法についても検討を行う。以上の結果を参考に平成31年度に行う予定であるモデルゲル食品の作成のための基礎的な情報を集める。
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