2018 Fiscal Year Research-status Report
高温障害米及び難消化性醸造残渣の消化補助酵素に関する検討
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17K07820
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
伊藤 俊彦 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (50336442)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋爪 克己 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (30372189)
藤田 直子 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (90315599)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 難消化性澱粉分解酵素 / 高温登熟障害米 / 超高アミロース米 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、昨年度までに高温登熟障害米の消化補助酵素の開発を目的とし、強い難消化性を示す変異体米(澱粉合成酵素及び澱粉分枝酵素の二重欠損変異体米:以下#4019と表記)を基質に用いた難消化性澱粉分解酵素活性測定法を構築した。また、焼酎用白麹菌が生産する耐酸性グルコアミラーゼに高い活性を認めた。一方、イネの登熟期気温が高くなるとアミロペクチン側鎖の中鎖と長鎖が増加するとの報告が有る。本研究で用いている#4019のアミロペクチン鎖長分布も中鎖及び長鎖比率が高いことから、白麹菌が生成する難消化性澱粉分解酵素は高温登熟障害米の消化を促進する働きが有ると考えられる。そこで、#4019分解活性を有する酵素を陰イオンクロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーにてSDS-PAGE上で単一となるまで精製した酵素を用いて2010年産70%精米秋田酒こまちを高温登熟障害米試料とし、対照には同一の水田から収穫した年度の異なる70%精米秋田酒こまち(2011, 2013年産)を用いて醸造環境下における消化試験を行った。なお、難消化性澱粉分解酵素の対照には酒造用グルコアミラーゼ「アマノ」SD(天野エンザイム)を陰イオン交換クロマトグラフィーで精製したものを用いた。その結果、酒造用グルコアミラーゼと比較して、#4019分解活性を有する酵素は高温登熟障害米の澱粉を効率よく分解出来ることが示された。併せて消化試験に用いた収穫年度の原料米に含まれるデンプンのアミロペクチン鎖長を調べたところ、登熟期の気温が高いほどアミロペクチンの短鎖が減少し、長鎖が増加していた。本研究で用いている超高アミロース米では短鎖が極端に減少し、長鎖が増加している。このことから、超高アミロース米は高温登熟障害米の極端な形で有るといえる。従って、超高アミロース米消化能は本研究におけるベンチマークとして有効であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つである高温登熟障害米を効率良く消化可能となる醸造用酵素の開発について、焼酎用白麹菌が生産する耐酸性グルコアミラーゼの利用が一つの手法であることを明らかにした。今年度の研究では精製した難消化性澱粉分解酵素を用いて実際の高温登熟障害米を用いた醸造環境下での消化試験を行い、本酵素が高温登熟障害米の消化促進に有効であることを見出した。また、併せて消化試験に用いた収穫年度の原料米に含まれるデンプンのアミロペクチン鎖長を調べたところ、登熟期の気温が高いほどアミロペクチンの短鎖が減少し、長鎖が増加していた。本研究で用いている超高アミロース米では短鎖が極端に減少し、長鎖が増加している。このことから、超高アミロース米は高温登熟障害米の極端な形で有るといえる。従って、超高アミロース米消化能は本研究におけるベンチマークとして有効であることが示された。一方で、清酒醸造では用いられる麹菌種が異なるため、清酒用麹菌であるAspergillus oryzaeが生産する高温登熟障害米消化補助酵素の開発が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、焼酎用麹菌が生産する難消化性澱粉分解酵素が高温登熟障害米の消化に対して有効であるこが明らかになった。そこで、今後は焼酎用麹菌が生産する難消化性澱粉を添加した清酒の小仕込み試験を行い、清酒醸造における有用性を確認する。また、清酒用麹菌が生産する難消化性澱粉分解酵素についても単離精製を進め、難消化性澱粉分解に関与する酵素を明らかにするとともに、高温登熟障害米への有用性を確認する。更には、清酒の残渣であり難消化物質である酒粕消化への有用性も確認し、酒粕加工への応用を検討していく。
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Causes of Carryover |
本研究で使用した試薬等、消耗品の一部に関して、他の研究用に購入した物を用いたことで差額が生じたため。
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Research Products
(2 results)