2018 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア熱帯林における枯死木による炭素蓄積と生物多様性維持のコベネフィット評価
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17K07842
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山下 聡 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (70450210)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 枯死木 / ボルネオ / 多孔菌類 / 菌食性昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
枯死木の腐朽の進行の程度を示す指標に腐朽度がある。これは,簡便でよく利用されるが,材密度や樹木が死亡してからの年数との関係については非常にあいまいである。そこで,本年はランビルヒルズ国立公園において、一年以内に死亡した枯死木を対象に,5か所から直径1cm長さ10cmの円筒分の材をドリルで採取し、材密度を推定した。継続的に材密度推定を行うことで,材の分解速度を推定することができるだけでなく,腐朽度と材密度の関係を明らかにすることができる。また、同公園において、直径10㎝から20㎝内の木材について材食性昆虫および材密度,腐朽度のデータを得た。これによって,倒木の腐朽度や材密度と材食性昆虫群集の関係を明らかにすることができる。 本年度はランビルヒルズ国立公園,シミラジャウ国立公園,ニア国立公園,およびロアガンブヌット国立公園においてFITを用いた昆虫採集を行った。倒木量のデータは既にあるため,今後,材食性や腐食食性昆虫を抜き出すことで枯死木量と昆虫群集の指標との対応関係をつけられるよう、ソーティングを進めたい。 また,これまでにサラワク州内の国立公園で採集されたキノコ食性昆虫約10000個体のソーティングを進めた。現在は科までの分類を概ね終えたところである。今後形態によって種まで同定する予定である。 サラワク州森林局に保管されている木材腐朽性多孔菌類の再同定を行い,標本ラベルより採集地点を特定した。解析の結果,森林タイプ間で木材腐朽性菌類の多様性が異なることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に予定していた腐朽度と材密度のデータについて、一部を得ることができた。また、昆虫相の調査についてもおおよそ予定通りに進行している。これまで得たデータの論文化については予定よりも遅れがあるが,本年度中に一編の査読なし論文として木材腐朽菌類のリストを出版することができた。 これらの状況からおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの野外調査によって、倒木量や菌食性昆虫群集,多孔菌類の多様性についてサンプルもしくはデータを得た。菌食性昆虫については今後,種同定を行いデータとする。 これらのデータをもとに論文執筆を行う。 また,腐朽度と材密度の関係については昨年度のデータだけでは不十分なため、本年度も野外調査を行い,論文作成に必要なデータを得る。
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Causes of Carryover |
試料整理のための物品を購入したが,予定よりも安価だったため,次年度使用額が生じた。 31年度に物品費として使用する。
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