2019 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア熱帯林における枯死木による炭素蓄積と生物多様性維持のコベネフィット評価
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17K07842
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
山下 聡 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 講師 (70450210)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 枯死木 / 生物多様性 / 多孔菌類 / 菌食性昆虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は枯死木による炭素蓄積量と生物多様性維持の二つの機能の間の量的関係を明らかにすることである。そのために本研究では,マレーシア国サラワク州政府諸機関との協力のもとに野外調査とその解析を行う。具体的には,15か所の国立公園において,枯死木の腐朽段階と体積,多孔菌類および菌食性昆虫の種多様性を記録することを予定している。この結果から,炭素蓄積量と多孔菌または菌食性昆虫の種数が線形関係か非線形関係にあるかを検討することとした。 本年度は,全研究期間4年中の3年目に当たった。これまでに9か所の国立公園で野外調査を行って来たが、これにより得られた昆虫標本が6700点程度まで蓄積されていたため,これらの同定を優先して進めた。採集された昆虫標本を光学顕微鏡下で精査し,データ入力を行った。その結果,個体数の上で,ゴミムシダマシ科昆虫とハネカクシ科昆虫が圧倒的に優占していた。この他に,オオキノコムシ科やテントウムシダマシ科,タマキノコムシ科などの昆虫が得られた。 枯死木の分解速度に関する調査をランビルヒルズ国立公園で昨年度より行ってきた。これは新規に発生した倒木をマーキングしたうえで、材密度の時間推移を継続調査により明らかにし,分解速度を推定するものである。本年度は2020年3月に野外調査を行う予定にしていたが,新型コロナウィルスによる移動制限令のため,調査を中止した。 第131回日本森林学会大会の関連研究集会「森林昆虫談話会」で本研究に関する発表を行う予定であったが,新型コロナウィルスにより学会大会が中止となったため,発表は行われなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度は,昨年度得られた菌類情報について,空間分布解析を行い論文を執筆すること,および,これまでに得られた昆虫標本の種同定を終える予定であった。 しかしながら,菌類情報については,個々の種の標本数が想定していたよりも少なく,当初想定していた解析を行える種が非常に少なかった。そのため,解析方法の再検討が必要となったが,空間分布解析に手間取っている。そのため,論文の執筆に至っていない。 また,昆虫標本の種同定については昨年から進めていたものの,微小甲虫が多く,検鏡に想定以上の時間を費やすこととなった。現在,科レベルまでの同定を終えているが,種同定にはより時間がかかるものと想定される。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は研究計画の最終年に当たり,データをまとめる予定である。データ量は当初予定よりも少なくなったが,残された時間や新型コロナウィルスの影響も考えると,新たなデータを得ることはせず,現在手元にあるデータで論文の作成を進めたい。 枯死木量と子実体発生の有無に関するデータや,サラワク州の標本庫から得た菌類標本情報についての論文執筆を優先する。 昆虫の種同定については本年度中の作業終了を目標として進める。
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Causes of Carryover |
2020年3月にマレーシア国で野外調査を実施しようとしたが,同国で新型コロナウィルスに関する移動制限令が発効されたため,渡航直後に帰国した。同年3月の出張については同年4月の支払いのため,会計上,多額の残額が生じた。2020年3月分の旅費は,すでに支払われた。なお、出張期間の短縮のために旅費に36091円の残額が生じた。この36091円については,新年度では標本整理のための物品費の一部として使用したい。新年度では標本整理用の物品費や論文執筆を行う際に発生する英文校閲代を中心に予算を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)