2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K07917
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
池田 譲 琉球大学, 理学部, 教授 (30342744)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | イカ類 / 共感性 / 社会 / 行動 / 脳・神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イカ類の群れの社会的機能の維持について、同種個体の心的状態や置かれている状況を理解し、共有する能力、すなわち「共感性」が基盤となっているとの仮説を立て、イカ類の共感性の実態とその発現過程を、体色・模様の変化を基調としたボディーパターンなどを検査項目として読み解き、共感性の系統発生について考察を試みる。 平成30年度は研究項目「共感性の発達過程」について、アオリイカを対象に以下の事柄を実施した。 野外採集したアオリイカ卵を室内飼育し、孵化個体の集団を得た。次に、これら飼育集団を対象に、前年度の研究成果を踏まえて、正と負の情動伝染に注目して共感性の孵化後の発現の有無を検証した。初めに、隣接する2つの透明な水槽にそれぞれアオリイカを収容して実演個体、観察個体とした。そして、実演個体のみに捕食者(驚異刺激)、餌生物(報酬刺激)、アオリイカ(中性刺激)のアニメーションを提示して、刺激に対する実演個体、およびそれを見た観察個体の反応を観察し、情動の伝搬が起こるか、その発現過程を検証した。その結果、実演個体は30日齢よりアニメーションに反応し、特に、捕食者のアニメーションに対して表出するボディーパターンを顕著に変化させた。すなわち、負の情動の誘導が認められた。また、表出されるボディーパターンは日齢より異なっており、情動反応が孵化後に変化することが考えらえた。一方、観察個体は60日齢より、捕食者アニメーションに対峙した実演個体を見て負の情動を示すボディーパターンを表出し、情動伝染が認められた。同様のことは90日齢のアオリイカにおいても認められた。これらのことを通じて、アオリイカでは孵化後に、驚異対象について負の情動伝染が発現すること、アニメーションを用いた行動実験が本種の行動発現の検証にも有効であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画に沿ってアオリイカの飼育を行い、これに基づいて行動実験を実施することができた。また、前年度に確立したアニメーション提示による情動、共感性の検証法が、若齢期のアオリイカにも有効であることを確認できた。それぞれの実験および観察は順調に進めることができ、特に大きな計画変更を行う必要は生じなかった。このことより、研究目的であるイカ類の共感性いついて重要な知見を得ることができた。これらは平成31年度(改め、令和元年度)の研究の基盤ともなり得るもので、平成30年度の研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は当初の研究計画に沿って研究項目を実施する。すなわち、他のイカ類についても共感性の実態を調べ、アオリイカと比較することでイカ類における共感性の進化的側面について解明することを試みる。
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Research Products
(9 results)