2017 Fiscal Year Research-status Report
サンマの産卵経験の有無が回遊様式にあたえる影響の解明
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17K07924
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
巣山 哲 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, グループ長 (70344322)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
冨士 泰期 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 東北区水産研究所, 研究員 (50792660)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | サンマ / 成熟 / 成長 / 耳石 / 生殖腺 / 回遊 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、耳石日周輪に基づく0歳魚の成長解析、卵巣内の小血管に基づく経産魚と未産魚の判別に使用する生殖腺標本の作製を行った。また、過去に蓄積されたサンマの測定データを解析することによって、海域および季節による産卵魚の割合、産卵魚の体長の違いを検討した。北太平洋の東経150-西経143度で採集したサンマの成長について、経度20°ごとに区切った4海域で平均体長に達する日齢を基準に比較した。平均体長に達する日齢は西から東の順に大きくなり、西側の海域では東側に比べて成長が早いことが示された。また、日周輪150本目における耳石径は、海域によって差が見いだされ、成長の海域差を示す指標になると考えられた。主要なコホートと考えられる体長20cm以上の個体のみで孵化時期を比較したところ、東経160度以西では1月以降に生まれた個体が52.3%を占めたが、180度以東ではピークは11月になり、1月以降に生まれた個体の割合は20%以下になった。同じ体長範囲においても,調査海域の東側に行くほど孵化時期が早く、成長の遅い個体の割合が増加すると考えられた。 生殖腺重量指数(GSI)に基づいて、海域別の産卵魚の割合とその体長を調べた。産卵魚の割合は中サイズ(24-29cm)および大サイズ(29cm以上)では秋に和歌山県沿岸や常磐海域において高い一方で、三陸沿岸や145°E以東の沖合海域では25%未満であった。冬には和歌山県沖に加え、沖合海域においても75%以上を示した。小サイズ(20-24cm)は、冬には沖合海域で75%以上であったものの、他の海域や時期では産卵していなかった。 卵巣内の小血管に基づく経産魚と割合のその海域差については、次年度に観察と解析を行う。 以上のように、成長と成熟の海域差についての基礎データが得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで蓄積されてきた測定データを解析することによって、海域や時期によって成熟特性に違いがあることが明らかになった。また、耳石日周輪によって0歳魚の成長履歴の解析を行った結果、海域によって成長に差があること、また、150日までの耳石径によって成長した海域の指標になることが示された。次年度以降、個体ごとに成長・成熟履歴の解析を行い回遊ルートを明らかにするための解析を進めることになるが、この指標は、1歳魚が0歳時に生育した海域の推測に用いることができると考えられる。さらに、1歳魚の産卵経験の有無を調べるための生殖腺組織標本を作製して、その観察の準備が整った。このように、海域や時期ごとの成熟特性が明らかになり、生育海域の指標となる形質が得られたことによって、次年度以降成熟と回遊の解明が進むと考えられる。以上のことから、おおむね順調に進捗していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、耳石日周輪に基づく1歳魚の成長解析を行ない、海域ごとの1歳魚の成長率の違いを検討するほか、生殖腺の観察によって産卵経験の有無を調べ、150日目の耳石径を指標として0歳時の成長海域を推定する。成長を解析した個体の産卵履歴を卵巣内の細血管を観察する手法によって明らかにする。これらのデータに基づいて、成長と産卵履歴の海域差、また、0歳魚hと1歳魚の成長様式を比較して、回遊経路と産卵履歴の関係を明らかにする。以上は当初の予定通りであり、当初の研究計画を変更する必要は今のところ必要ない。また、過去に蓄積された体長測定結果が本研究における成熟の海域差の解明に有効であることが示されたため、さらに過去データの解析を行い成熟の海域差た季節差を検討する。
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Causes of Carryover |
◆差額を生じた理由。耳石撮影用に、顕微鏡用デジタルカメラ(1.1/1.8 型280 万画素CCD) オリンパス型式DP-22-C 1 式を90万円で購入する予定であったが、コンバータを介することによって一般のデジタルカメラをとりつけられるタイプと比較したところ、性能、扱いやすさが優れるうえ、価格も36万円と安価であった。このため、物品費が当初予定を下回った。 このほか、耳石研磨用消耗品も当初の使用見込みより少なく、新規購入の必要が生じなかった。このため、当初の使用予定を、約60万円下回った。 ◆差額の使用について。次年度には消耗品費が増えることが予想されるため、その購入に使用する。また、耳石日周輪解析システムを購入するが、必要に応じてオプション機能を導入することによって、作業効率の改善を検討する。さらに、論文作成のための英文校閲料として使用する予定である。
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