2018 Fiscal Year Research-status Report
クルマエビ抗ウイルス因子の挙動および産生誘導機構の解明
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17K07953
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
米加田 徹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 増養殖研究所, 研究員 (40597944)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | クルマエビ / 抗ウイルス応答 / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
クルマエビの血リンパ液中に存在する抗ウイルス応答関連因子の挙動を把握することを目的として、その因子の特定や検出系の構築を試みている。 クルマエビの血リンパ液にはヘモシアニンと呼ばれる酸素を運搬するタンパク質が存在しているが、ヘモシアニンの血リンパ液中の存在量は極めて多く、血リンパ液中総タンパク質の9割以上を占めている。そのため、存在量の少ないタンパク質の量を測定することは非常に困難であるため、ヘモシアニンをできる限り除去する必要がある。これまでに、硫安沈殿、金属イオンやポリクローナル抗体、さらにはモノクローナル抗体などを用いてヘモシアニンの除去を試みたものの、血リンパ液中の微量タンパク質の解析に活用できるヘモシアニン除去法を確立するには至っていなかった。本年度は、ある種の高分子化合物により高分子タンパク質を沈殿させることで低分子タンパク質を解析することが可能であることが明らかとなった。本解析系により、血リンパ液中の微量タンパク質の量的把握がより高精度に実施できると考えられる。 クルマエビの血リンパ液中には血球から分泌される抗ウイルス応答因子も存在すると考えられることから、抗ウイルス応答を誘導させたクルマエビの血球を採取し、次世代シークエンサーによるトランスクリプトーム解析を実施した。解析の結果、極めて遺伝子量が増加するものと顕著に遺伝子量が低下する抗微生物ペプチド群が検出された。これまでにこのように相補的な挙動を示す免疫関連因子はクルマエビでは認められておらず、エビ類独自の免疫応答の解明に重要な知見になると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クルマエビの血リンパ液からのヘモシアニンの除去の効率化を図るために、様々な手法を試してきたものの、現実的に利用可能な方法の条件検討に非常に多大な時間を要するに至った。そのため、血リンパ液中の抗ウイルス応答タンパク質の解析系の開発が遅れている。また、試験管内での抗ウイルス応答関連因子の挙動を把握するにも至ってはいない。 しかしながら、トランスクリプトーム解析により、血球において数多くの免疫応答関連因子の変動を捉えていることから、今後はこれらの情報を基にタンパク質の解析系の構築への繋げていくことが可能となったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
高分子タンパク質の除去法を用いて処理したクルマエビの血リンパ液のプロテオーム解析を実施し、タンパク質レベルでの抗ウイルス応答関連因子の探索を実施する。発現に変動が見られたタンパク質については、質量分析によりタンパク質の同定を試みる。また、トランスクリプトーム解析により明らかとなった抗ウイルス応答関連遺伝子群については抗体を作製し、血リンパ液中の変動を把握する。抗ウイルス因子の活性には,ウイルスの糖鎖構造が深く関与していることが推測される。そこで,抗ウイルス因子の精製タンパク質を用いて,シュガーチップによりその標的の糖鎖組成を明らかとする。また,ウイルスの構成成分については,その表面糖鎖構造をレクチンカラムあるいはレクチンアレイを用いることで明らかとする。表面糖鎖構造の情報を基に,抗ウイルス因子,ウイルス構成因子に対する抗体および細胞内のファゴソームやリソソームマーカーにより,抗ウイルス因子が如何に機能を発揮しているかについて,蛍光多重免疫染色法によりその実態を明らかとする。
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