2021 Fiscal Year Annual Research Report
Research and development in agriculture -contribution of genetic background-
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17K07955
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 陽子 北海道大学, 農学研究院, 講師 (30520796)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 育成者権 / 小麦 / UPOV / EU |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスの調査結果を踏まえ、育成者権の強化、具体的には自家増殖分に対するロイヤリティの付加が認められたもので、この制度改編の影響を分析した。具体的には、以下の通り。
知的財産権は、研究開発投資とイノベーションの重要な推進力である。1991年の国際植物新品種保護連合(UPOV)の改正により、ヨーロッパの作物育種家は、認証種子に加えて、農家自身が収穫から得た種子を翌年の播種につかう自家増殖分に対してもロイヤリティを徴収することができるようになった。この知的財産権の制度改編について、植物育種家の権利登録データを対象に、差の差分析をもちいて分析した。結果は、この改正が品種開発のイノベーションに有意な効果を示し、育成者権の拡大が種子研究の生産性を向上させることを示したた。 しかし、国内育種家と国外育種家を分けて分析すると、結果はやや異なるものとなった。すなわち、ある国Aで品種改良の生産性が向上し、品種登録数が増加すると、隣国での品種開発が抑制され、隣国での登録数が減少する。つまり、今回の知的財産権強化は自国内育種家の研究成果を向上させる一方で、他国での研究成果を阻害する側面を持つ。すなわち、国境を越えたスケールメリットが発揮される可能性を示す。ただし、こうした他国の研究資源が失われることは、研究開発制度の効率化を実現する一方で、特定の国や研究機関による市場支配力上昇の問題にもつながる。両者がトレードオフにあることは確かでり、新規開発コストが高まる前に、国同士の政策調和が必要であろう。
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