2018 Fiscal Year Research-status Report
和牛繁殖経営における担い手構造再編の条件に関する研究
Project/Area Number |
17K07976
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
堀田 和彦 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (00192740)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 和牛繁殖経営 / 技術条件 / 経営条件 / 経済環境 / 地域条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は前年の分析結果を整理、統合するとともに、全国に点在する代表的和牛繁殖経営をとりまく技術・経営・経済環境の外部要因ともいうべき地域条件の調査を実施した。家族経営タイプの和牛繁殖経営が発展するには飼料米の活用によるソフトグレインサイレージの利用や公共牧場による周年預託生産サービスが有効であった。飼料米によるソフトグレインサイレージ(SGS)の生産には飼料米生産農家、SGS技術提供者、SGS生産業者、流通業者等が存在しなければ和牛繁殖農家にその技術は普及しないことが明らかとなった。また、公共牧場による周年預託生産サービスにおいても同様である。しかし、このようなサービス提供者の有無は地域毎に同一とは言い難く、またそれぞれの地域が創意工夫のもと実施している現状が明らかとなった。また、企業的経営タイプにおいても、酪農分野との連携では受精卵移植技術の普及・支援が必要であるか、繁殖肥育一経営タイプであれば、大量の最終生産物を流通・販売する食肉卸売業との連携が不可欠であった。経営の再編、担い手構造の再編には、このように必要な技術・経営・経済環境を提供できる地域の条件も極めて重要であり、平成30年度はその点への調査を実施し、代表的和牛繁殖経営の構造再編に必要な技術・経営・経済環境の提供状況を整理し、いかなる地域条件(連携条件、地域施策等)の整備が重要であるかを整理した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
想定していた調査地へのアポ、調査の実施がスムーズに進み、想定していた仮説に基づく成果が得られたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である平成31年(令和元年)度は、前年度までの分析により明らかになった点、不明な部分を整理し、補足調査を実施し、最終的に和牛繁殖経営における担い手構造再編のための条件を整理・理論化する。それらのプロセスはその他の農業分野の担い手構造再編にも有効な情報提供につながるものと思われる。 平成29~30年度に実施した代表的な和牛繁殖経営への定性調査は上述したようにその分析視点が技術・経営・経済環境の変化の外部要因ともいうべき地域条件にまで視点を広げ、解明する作業であり、地域の関連組織への網羅的調査が必要であった。今後の調査においても多くの困難をともなう事が予想される。多くの事例に対して再調査および補足調査が必要であることが想定される。今年度はそれらの補足調査に多くの時間を割くとともに、最終的にそれら事例の包括的整理を実施し、理論化を進める予定である。 また、本研究によって明らかになった和牛繁殖経営における担い手構造再編のための条件の理論的整理は、その他の同様の性格を有する他分野にも有効な理論的示唆、施策メニューの検討を可能にするものと思われる。すなわち、大規模化、高品質化、マーケットイン、マニュアル化が容易には進行しない稲作をはじめとする他の分野である。これらを踏まえ、他の分野への理論的拡張、必要な施策メニューも検討する。
|