2018 Fiscal Year Research-status Report
稲作を土台とした地域通貨流通の社会実験による地域活性化効果の検証
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17K07979
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Research Institution | Niigata Sangyo University |
Principal Investigator |
阿部 雅明 新潟産業大学, 経済学部, 教授 (20319015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都宮 仁 新潟産業大学, 経済学部, 講師 (60711091)
平野 実良 新潟産業大学, 経済学部, 講師 (10434458)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 地域通貨 / 商店街活性化 / 地域通貨ゲーム / 農業振興 / 地産地消 / 囚人のジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ボランティアによって生産された天日干し農薬不使用のお米の販売収益を基本的財源の一つとする地域通貨を、新潟県柏崎市において実際に発行・ 流通させ、地域経済・コミュニティーに与える効果を検証するものである。平成30年度中に実施した事業は、基本的には29年度と同様、地域通貨の発行・流通の社会実験を中心に、通貨流通の基本的財源の一つとなるボランティアによるお米づくり、地域通貨先進実施地への視察、現状の地域通貨流通制度の検証・改良のための市民対象の「地域通貨ゲーム」の実施、柏崎市民の消費動向や地域 通貨への理解・関心に関するアンケート調査、地域通貨の市民向け広報を目的としたWEBページの整備を行った。これらの 実施項目のなかの主なものについて以下に簡潔に報告する。 まず、地域通貨流通量拡大のための課題となっていた外部団体との協力体制の構築については、本事業を展開する柏崎市に所在する夢の森公園の管理者の協力を得て、ボランティアによって生産したお米(もち米)を使用した市民向け餅つき大会を11月に実施することができた。そのイベント会場では風輪通貨流通活動の紹介パネルを展示し、市民への広報活動ができた。また、実質的な配布枚数を増やすために柏崎市健康推進課に協力してもらい市民健康ポイント制度の賞品として風輪通貨を採用していただいた。この取り組みは次年度以降も継続され、健康ポイント用の特別版の風輪通貨を爬行する予定である。このように、外部団体の資金を活用しながら風輪通貨を配布する仕組みづくりを推進することができた。 また、29年度中に作成した地域通貨ゲームにおいて、地方の消費行動における囚人のジレンマのメカニズムを体験できるようバージョンアップし、市民に体験してもらった。 市民向けおよび風輪通貨協力店向けアンケート調査も前年度同様実施し経年変化の検証も行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は農業振興を目的の一つとした地域通貨流通システムの構築である。そのために初年度から継続してお米の生産をボランティアによって実施し、それに付随して得られた収入を活動資金として地域通貨を発行流通させている。このように実際に地域通貨を流通させ、その協力店や市民(地域通貨の使用者、未使用者とも)に、消費動向や地域社会に関するアンケート実施をして、地域の現状把握をしながらより望ましい地域通貨流通制度の構築を目指している。 以上のお米づくりと市民アンケート調査は予定どおり実施することができている。アンケートに関しては各年度に結果を集計し結果を学会等で発表することができた。また、事業計画にある地域通貨ゲームの作成と市民向け体験会も予定通り実施できており、体験者からは地域通貨の地域経済に与える影響が実感として理解することができたとの声をいただいている。 3年を期間とする本研究では最終的に補助金に頼らない独立した地域通貨流通制度の構築を目指している。この点はすでに小規模ではあるが(年平均20万円分の地域通貨)、を科研費とは独立して、市内協力店や外部団体の協力により発行・流通させることができるようになっており、ある程度の成果といえる。しかし、市内商店街の活性化という意味ではこの流通規模ではほとんど意味をなさない。今後は流通規模拡大のための仕組みづくりをさらに進める必要がある。 また、これまでの調査により、農業振興においては生産の問題よりも生産後の販売先の確保の問題が重要であることが明らかになっている。今後は直接消費者に販売し安定した収入が得られる流通システムを考える必要がある。この流通システムに地域通貨を活用したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年計画で実施している本事情は2年が終了した。これまでに基本的な地域通貨流通制度を確立し、新潟県柏崎市において流通実験を行なっている。この実験により地域通貨による地元商店活性化における課題も見えてきている。まず、流通規模が小さいうちは商店側のメリットがほとんど見えないところである。そのため現状では、商店主は学生の活動に協力してやっているという意識での参加者が多い。また、地域通貨を使用し買い物をする市民側においても、その期待される地域経済への効果を理解していない人が多い。 そのため今後の研究においては、地域通貨流通が地域経済に与える影響をわかりやすく理解してもらうための広報活動や、地域通貨ゲームの更なる改良と市民への体験会を通じての啓蒙活動に力を入れたい。そこで、地方経済における個人消費者の合理的行動(品数豊富で低価格な大型ショッピングセンター、さらにはインターネットショッピングでの購買行動)が地域資本の流出を招き、地域経済の衰退を引き起こしていることを理解してもらう。ここで、地域経済衰退と消費行動の関係を理解しても、現実的に消費行動を変化させることは困難である。そこで、地域通貨の導入が消費者の合理的行動と地域社会の活性化を同時に達成できる制度設計を本研究では目指す。 ここでいう地域経済の問題は世界共通の問題と言える。経済のグローバル化による地域経済の衰退への処方箋としての地域通貨流通制度の構築について、理論と実践の両面から研究していきたい。そのため、地域通貨流通の社会実験を継続しながら、アンケート調査を実施し市民意識の変化を検証するとともに、本研究中には難しいかも知れないが、地域通貨流通による地域資金循環の拡大を検証できるよう流通規模の拡大を目指す。
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Causes of Carryover |
平成30年度の事業実施の結果、次年度使用額が5312円となりました。概ね計画通りの使用額となりましたが、アンケート調査の回収率の予測と実際の結果のズレ等により、ぴったり予算どおりとはなりませんでした。 次年度使用額はアンケート用紙の返信用封筒等の購入に充てる予定です。
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Remarks |
新潟県柏崎市で流通実験を行なっている地域通貨(風輪通貨)の紹介ページです。
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