2017 Fiscal Year Research-status Report
構造改革先進地における農業構造変動の地域性と将来動向予測に関する研究
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17K07983
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
細山 隆夫 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 主席研究員 (50526944)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉戸 克裕 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 北海道農業研究センター, 上級研究員 (30567714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 北海道水田作 / 北海道酪農 / 北陸水田作 / 農業構造の変化 / 階層構成 / 面積シェア / 将来動向予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度として、a北海道水田作では道央水田地帯を対象に農業構造変化の地域性を検討するとともに、その将来動向予測を行った。b北海道酪農では経営体減少の一方で飼養頭数規模の拡大が進む中、中小規模層が存続する要因を検討した。C北陸水田作では新潟・下越~福井・嶺南を対象に農業構造変化の地域性を示しつつ、将来動向予測を行った。その結果の概要は以下の通りである。 a北海道水田作:最近の農業構造変化=階層分化は上川中央、中空知では両極分化型、北空知、南空知は中上層偏重型となって現れていることを明らかにした。また、2030年までの将来動向予測として上川中央、中空知では階層構成のフラット化が進むこと、北空知、南空知では上位階層の肥大化を伴ったピラミッド型化が進むこと、を示した。この結果を細山(2018)「道央水田地帯における農業構造変化の地域性と将来動向予測―石狩川流域の現状と展望―」として北海道農業経済学会で報告した。 b北海道酪農:2015年農業センサス個票組み替えデータの分析から、北海道酪農経営体の減少と飼養頭数規模拡大が進展するもとで、中小規模層が存続する傾向とその要因を明らかにした。 c北陸水田作:まず、農業構造変化として西南部地域では大規模水田作経営が形成されていることを明らかにした。①販売農家レベルでは新潟・上越を筆頭に富山・呉東、呉西、石川・加賀、そして福井・嶺北、嶺南における大規模階層の面積シェアが軽視できない高水準に到達していた。②農業経営体では上越、富山の呉東、呉西、嶺北で大規模化が著しい実態にあった。次いで、同地域の将来動向としても大規模階層の面積シェアが大幅に高まり、最大規模階層がモード層となる動きも見られた。特に50ha以上層が最も厚くなるのは福井・嶺北であり、次いで富山の呉西、石川の加賀、新潟の上越となっていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、a北海道水田作では農業構造変化の地域性と将来動向予測を示すことができた。b北海道酪農では中小規模層の存続要因を明らかにした。c北陸水田作では下越~嶺南における農業構造変化の地域性と将来動向予測も示し得た。特に北陸については次年度実施予定の将来動向予測を前倒しで実施しており、早くに公表できる体制が整った。 加えて、複数の学会で研究結果を公表することができた。若干取り上げれば、①細山(2017)「北海道水田地帯における農業構造の変動と特質―農業センサス分析を主とした接近―」農業問題研究学会報告、『農業問題研究』(投稿中)、②細山(2018)「道央水田地帯における農業構造変化の地域性と将来動向予測―石狩川流域の現状と展望―」北海道農業経済学会報告、『フロンティア農業経済研究』(投稿中)、③杉戸(2018)「北海道酪農経営における中小規模層存続の要因」、『農業経済研究』、等である。 あわせて、実態調査レベルとしても、北海道水田作の上川中央、南空知では大規模水田作経営のデータを蓄積し、北海道酪農の足寄町、芦別市、猿払村では酪農経営のデータを収集・分析した。同時に北陸水田作の新潟・上越市では大規模借地経営、集落営農のデータを蓄積した。また、ここで一つ留意がある。29年度は新潟・糸魚川市における大規模借地経営や集落営農の予備的調査を行う予定であった。だが、先に富山・入善町の同担い手経営体の予備的調査が行えたため、糸魚川市の予備的調査は次年度に回すこととなった。 以上を総合的に考慮して、「おおむね順調に進展している」と判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
a北海道水田作:上川中央や南空知を対象とし、農村集落のアンケート調査や実態調査も踏まえたシミュレーションを行う。また、農業構造の将来動向予測結果、大規模水田作経営の実態調査結果、及び上記シミュレーション結果とを合わせ、大規模化の具体的な動きを精査する。このうち、大規模水田作経営の実態調査結果に関しては日本農業経済学会での報告、及び投稿を予定している。 b北海道酪農:道内主要酪農地域(根室・釧路・宗谷・十勝・オホーツク)を対象に、マルコフ推移確率行列モデルを用いて将来動向の予測シミュレーションを行い、その地域差を比較するとともに、現地実態調査によりその要因等について考察する。 c北陸水田作:新潟県上越市、糸魚川市、富山県入善町等における大規模借地経営、集落営農の実態調査を行う。同時に、29年度実施の農業構造変化の地域性の解析結果と合わせ、農業構造の重層的地域性(大規模借地経営、集落営農の展開・交差状況)を検討する。こうした中、農業構造の重層的地域性については農業問題研究学会での報告、及び投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
理由:本年度はほぼ順当に北海道、北陸の調査研究、及び学会報告・投稿等を行え、必要な予算もおよそ適切に遂行し得たと思っている。ただし、次年度使用額が生じた理由として、次の点がある。即ち、29年度前半期に北海道水田作、北陸水田作について農業センサス個票組み替え集計分析、農業構造の将来動向予測の分析に時間とエネルギーを集中させた事情がある。そのため、結果として北陸水田作1回分の調査旅費が残ってしまったのである。なお本年度についてだが、29年度に農業センサス個票組み替え集計分析、農業構造の将来動向予測の分析が進捗したことから、調査研究に時間とエネルギーを投入することができる。 使用計画:平成30年度は北海道水田作、北海道酪農、北陸水田作の調査を実施し、同時に学会報告・投稿を複数行う予定であるため、それらの経費に充てる。具体的に、a北海道水田作では引き続き上川中央、南空知を対象とした実態調査等を進め、そのデータについて集計・分析・考察を行うとともに、それを学会に投稿する。b北海道酪農では各地における実態調査を引き続き進めると同時に、将来動向予測の分析結果を学会で報告し、投稿する。c北陸水田作では複数市町村を訪問し、JA・行政データの収集、経営体の実態調査等を行う。また、農業構造の重層的地域性に関する集計・分析を進め、その結果を学会で報告するとともに投稿する。
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