2018 Fiscal Year Research-status Report
高齢作業者の能力を活用するかんきつ類収穫支援ロボットの開発
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17K08035
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Research Institution | Matsue National College of Technology |
Principal Investigator |
藤岡 美博 松江工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (80321470)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 柑橘類 / 直動式アクチュエータ / XBee / パラボラ式アンテナ |
Outline of Annual Research Achievements |
ロボットの本体の改良を行うため,タイヤによって移動し,直動式アクチュエータによるカゴの持ち上げ機構を有するロボットの設計・試作を行った.ロボットの主要材料は,アルミニウム製の角パイプや板材を使用した.製作したロボットは,コイルバネを使用したサスペンション機構により支持された4輪のタイヤ(直径225 mm)により移動する.ロボットの性能として,全長735 mm×全幅 560 mm× 全高 570 mm(移動時,カゴを除く),質量 22.5 ㎏ であり,移動速度は15 kg のおもりを載せて,未舗装の平地で約1.4 km/h となった. ロボットには,収穫した果実を落下させないように運搬しモノレールに積載されたコンテナへ移し替えるための持ち上げ機能を持たせた.この機能を実現する運搬機構は,カゴ(市販のもの 直径 360 mm,高さ 280 mm)を保持するよう持ち上げ機構上部にカゴに適した枠を作成した. 持ち上げ機構では,直動型アクチュエータによって,470 mm 持ち上げる機構を設計・製作した.このとき,15 ㎏ の分銅を46.5 秒で持ち上げることを確認した. 次にロボットの果樹園内での自律移動を行うための作業者位置推定システムの開発を行った.位置推定システムのためにZigbee規格の通信器XBee を使用した.作業者に見立てた XBee 1個を送信器とし,ロボットに設置する受信器側 XBee2個にパラボラ型リフレクタ(幅99.5 ×高さ60 mm)を取り付けた.受信器2 個を500 mm の間隔で設置し,送受信器の距離と送信器とリフレクタとの角度による電波受信強度(RSSI値)を測定した. 測定は,松江高専構内の遮蔽物などのない場所と果樹園において実験を行った.その結果,送信器と2個のリフレクタ付き受信器角度と距離によりRSSI値が変化することを確認した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発を目指しているロボットで,従来のロボットではカゴを水平に保持したまま持ち上げる機構は実現されていなかった.そこで,電動の直動型アクチュエータを用いた機構によるパンタグラフ機構の持ち上げ機構を製作した.その結果,カゴに入った15 ㎏ の分銅を47秒程度で,470 mm 持ち上げることが確認できた.より一層の高速化が望まれるが自律移動するロボットとしての性能とすれば十分であり,果実を持ち上げる機構については,大きく前進できたと判断できる. 移動機構に関しては,クローラ型と比較して効率がよいと考えられるタイヤによる移動を検討した.市販の台車用のタイヤを用いたロボットを製作し,果樹園内を試走して走行性能を確認した.その結果,タイヤ機構では,斜度 20度程度の斜面を登坂できないことがわかり,市販のタイヤによる移動機構は性能不足であると確認できた. 一方,作業者の位置推定システムの実現可能性を高めるため,従来と同様に特別な資格等が必要のないZigbee 規格の通信機XBeeを使用した.本年度は,アルミ材を切削加工により整形したリフレクタ(幅 99.5 × 高さ 60 mm)を製作して,XBeeに取り付けた.また,XBeeにより得られる電波強度RSSI値は-20 ~-100 dB 程度であるため,距離測定の分解能として不十分である可能性がある.そこで,三角測量の原理を活用して,より細かい分解能で距離が推定できるシステムの開発を目指した.ロボットに設置するものとして受信器 2個を500 mm間隔で設置し,それぞれにパラボラ型リフレクタを取り付けて,発信器との角度とRSSI値を測定した.このとき,受信器の角度はステッピングモータで18 度間隔で変更するようにした. その結果,発信器と受信器との角度および距離によるRSSI値の傾向を確認し,方向と距離推定の可能性があることが確認できた.
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Strategy for Future Research Activity |
運搬機構においては,直動型のアクチュエータを使用したパンタグラフ機構により,15 ㎏の分銅を持ち上げることができたため,持ち上げ機能については十分となった.そこで,今後は自動でカゴの中の果実をコンテナに移し替えるための機構の開発を目指す.移し替える際に,果実への衝撃などを減らすことも考慮しながら機構の設計開発を行う. また,試走した果樹園の一部ではややロボットの全幅が大きすぎることがわかった.そこで,ロボット全体の寸法と質量を再検討し,より実用化に向けた改良を行う.このとき,効率は落ちるもののロボットの登坂能力の向上を目指し,凹凸のある地面でも安定して走行できるクローラ機構を開発する.開発したロボットは,平成30年度と同様に果樹園での試走を行って,実用的なロボットの知見を得る. XBeeを用いた作業者位置推定システムについては,パラボラ型リフレクタの焦点距離の影響と見られる予期しないRSSI値の変化が見られたため,再度2,3種類のリフレクタを製作する.製作したリフレクタごとに,リフレクタと発信器との角度と距離によるRSSI値の差が大きくなるかどうかを検討する. また,今年度同様,三角測量の原理を利用し,2個のXBee の角度から1個の場合と比較して距離の推定精度がどの程度向上するかについての確認を行う.また,ステッピングモータを使用して,測定したRSSI値とXBeeの角度から自動で発信器の方向と距離を推定するシステムの実現を目指す.特に,角度とRSSI値の組み合わせから,距離推定に関する精度についても検証する. この距離測定システムについてもロボット本体と同様に実際の果樹園での測定実験を行ってその性能についてより詳細に評価・検討する.
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Causes of Carryover |
果樹園でのテスト走行がやや遅くなったため,それらについての予算執行が遅くなっていることが一つの原因と言える. 謝金等が予定より少なくなる見込であり,また出張等の額も予定より少なくなる予定である.そこで,リフレクタの種類などを増やすことやセンサシステム等の開発のため,物品等の購入費として使用したい.
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Research Products
(3 results)