2018 Fiscal Year Research-status Report
但馬牛の長期的な遺伝的多様性維持における系統造成の有効性
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17K08045
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大山 憲二 神戸大学, 農学研究科, 教授 (70322203)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 和牛 / 遺伝的多様性 / 但馬牛 / 近交係数 / シミュレ-ション |
Outline of Annual Research Achievements |
現在、黒毛和種のなかで最も遺伝的多様性の減少が危惧されているのは閉鎖育種として著名な兵庫県の集団(但馬牛)である。平成29年度は、集団を特徴づけるパラメータの推定を行い、30年度はその結果をもとに集団を5つの系統に分類したシミュレーションを開始した。 実際の集団の解析からシミュレーションで用いる種雄牛は毎世代10頭、繁殖雌牛は7,000頭程度が妥当であると考えられたが、基礎的な検討の結果、雌牛の頭数はさほど結果に影響しないことから5,000頭とした。つまり各系統、種雄牛2頭、繁殖雌牛1,000頭を各世代で供用することとなる。 系統分類は、ジーンドロッピング法で得られる始祖牛の遺伝子保有確率を主成分分析にかけ、得られた第3主成分までの主成分得点の正負の組み合わせにより行った。ただし、第1主成分得点が正の系統はG1-4とし、第2・3主成分特定の正負の組み合わせにより4つの系統(G5、G6、G7、G8)を作成した。また、主成分得点の空間分布を考え、原点から遠く、系統を区別する面から遠いものをその系統らしいと考え、それを指標化したもの(DL値)で選抜を行った。シミュレーションの反復は30回とした。 シミュレーションの結果、15世代先まで集団が維持できたのはG1-4系統のみとなった。その他の系統は、15世代に至るまでに系統内の個体数が0になり途絶えてしまった。とくにG5は3世代目で0頭となり、維持が最も難しい系統であることが推測された。 近交係数では、G1-4は15世代目で64.9%にまで達していた。これは集団全体で選抜交配を行う場合と比較し、系統内での選抜交配では供用する種牛数が少なくなることに由来すると考えられた。このように系統内の変異は大きく減少するものの、系統間に遺伝的多様性が大きく残されている可能性があり、G5に代表される系統の長期的な維持の方策と共に今後の検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成30年度はプログラムの開発を完了し、15世代先まで集団を発生する基本的なシミュレーションを実施する予定としていた。この予定部分は完了し、とくに雄牛の数が少ない場合には、雌牛の頭数が大きく影響しないことも確認できたため、シミュレーションの時間を短縮するために雌牛を5000頭/世代で実施することとした。また、予定では次年度に実施する予定であったDL値による選抜を行うところまで研究を進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度はDL値によるシミュレーションを種々の条件下で継続する。とくに、特定の系統の維持が困難になる現象は、当初想定していなかった課題であり、この原因のひとつは設定した種牛の数が存続に必要な数に満たないためであると考えられる。したがって、各世代の親となる個体をどの程度にすれば維持が可能になるかの検討を追加で行う。DL値についても種々の計算方法を考案しており、当初の予定通りそれらの比較検討を行う。これらの方法間の優位性の判断には、近交係数だけでなく、系統内の多様性、系統間の多様性、それらの和である全体の多様性を観察することとし、世代の経過に伴う変化を調査する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、平成30年度に計画していた研究成果発表のための外国出張が学務上のスケジュールの問題もあり中止したためである。翌年度については、国内外で成果発表を行う機会をもちたいと考えており、それらの旅費として使用する計画である。
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