2017 Fiscal Year Research-status Report
チョウ目幼虫の耳の進化:捕食回避のための機械感覚子は生活様式に規定されるか?
Project/Area Number |
17K08158
|
Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
高梨 琢磨 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (60399376)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土原 和子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (10300823)
山崎 一夫 地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所, 微生物部, 主任研究員 (30332448)
杉浦 真治 神戸大学, 農学研究科, 准教授 (70399377)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 感覚 / 行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
ガの幼虫は、体表に点在する糸状感覚子(機械感覚子の1種)で音を検知することができる。この感覚子は気流等も検知する。この糸状感覚子は胸部に存在するが、チョウ目において糸状感覚子の数や位置が多様であると考えられる。本研究では、チョウ目を網羅する分類群における糸状感覚子の形態観察、行動実験による機能解明、そして糸状感覚子に関する系統・進化解析をおこなうことで、寄主植物における生活様式の変化によって、糸状感覚子が発達や退化をおこしていることを検証する。今年度は、ガ類の幼虫を対象として、日本各地で採集し、気流を感知する糸状感覚子の同定を試みた。ヤガなどの25上科において多数種の個体を観察した結果、胸部の第1-3節に存在する糸状感覚子により気流を感知する種が最も多く存在した。さらに腹部の単数または複数の節において糸状感覚子を持つ種もあった。それらの数や配置等は上科間そして上科内においても多様であり、また糸状感覚子の形態にも変異が見られた。これらの変異は生活様式に規定されると推察され、今後さらなる系統・進化解析をおこなう。さらに、オオシモフリスズメ(カイコガ上科)の幼虫は、腹部の気門から空気放出することで、防衛のために発音することを示した。オオシモフリスズメの幼虫は、捕食者であるクロカタビロオサムシ成虫に対して、頭突き、吐き戻し、発音による防衛をおこない、特に頭突きがクロカタビロオサムシの攻撃を阻止するのに有効であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ガ類の幼虫25上科において、糸状感覚子が胸部の第1-3節と腹部の単数または複数の節にあることが特定された。これらの変異は生活様式に規定されると推察される。また、オオシモフリスズメの幼虫は、頭突きや発音による防衛をおこなっていた。
|
Strategy for Future Research Activity |
チョウ目のうちチョウ類において、糸状感覚子の形態観察、行動実験による機能解明をおこなう。そして、チョウ目全体の糸状感覚子に関する系統・進化解析をおこなうことで、寄主植物における生活様式の変化によって、感覚子が発達や退化をおこしていることを検証する。特に、糸状感覚子の分布が生活様式や捕食回避等に規定されるかどうかに注目する
|
Causes of Carryover |
計画していた物品が、別の手法によって代用可能であったため、購入をとりやめた。その余剰分について、来年度には研究成果報告のための打合せや、サンプル採集のための旅費として計上する。
|
Research Products
(5 results)