2017 Fiscal Year Research-status Report
Genetic model of hypothyroidism and analysis of pathological mechanism on neuropsychological symptoms
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17K08276
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
野田 百美 九州大学, 薬学研究院, 准教授 (80127985)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 甲状腺ホルモン / ミクログリア / アストロサイト / シナプススパイン / 甲状腺機能低下症 / 行動変化 / 認知機能 / 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は中枢神経系における甲状腺ホルモンの機能と、その機能異常による神経・精神症状に注目してきた。血中甲状腺ホルモン(前駆体:T4)はトランスポーターを介して脳内・アストロサイトに取り込まれ、タイプ2脱ヨード酵素(D2)によって活性化型(T3)に変換された後、種々の細胞に作用する(Noda, 2015)。我々は脳内免疫細胞であるミクログリアにもT3の受容体が発現し、顕著な遊走性・貪食性亢進を起こすことを初代培養ミクログリアを用いて報告した(Mori et al., 2015)。一方、成体では、甲状腺機能亢進症モデルマウスを用いてグリア細胞を観察したところ、いずれも、性と週齢によってグリア細胞の形態変化や行動が異なることがわかった(Noda et al, 2016)。臨床的には、甲状腺機能亢進症・低下症は様々な中枢神経系疾患と関連がある他、高齢者の甲状腺機能低下症と、アルツハイマー病発症リスクは深い関係にあり、性差が顕著に存在することも報告されている。しかし、こうした甲状腺機能異常症と神経・グリア連関、性ホルモンと加齢の影響について、その分子基盤は殆ど解明されていない。加齢によって増える甲状腺機能異常は殆どが低下症であり、高齢化社会で増えるウツや認知症には、甲状腺機能低下症が大きく関わっている。従って、ウツや認知症の予防・治療のために、適切な甲状腺機能低下症モデルを作成し、脳の機能形態学的変化、行動や認知に及ぼす影響を検討した。 1)グリア細胞とシナプスの三次元構造解析:海馬ニューロンのシナプススパイン(棘)の3次元構造を解析したところ、若齢オスの甲状腺ホルモン亢進症、低下症におけるスパインの形態変化を比較・検討した。 2)甲状腺機能低下症がもたらす行動・認知機能変化:甲状腺機能亢進症モデル・低下症における行動変化、記憶と学習、その性差と加齢の影響を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)甲状腺機能亢進症については、若齢オスマウスに続き、若齢メスマウスの海馬歯状回のスパインの解析を3次元電子顕微鏡解析により行った。シナプススパインの数と容量の変化を解析したところ、オスでは容量の変化なしにスパイン数の亢進が見られた。一方、メスマウスでは、容量の減少、より顕著なシナプス数の減少が見られた。 2)甲状腺機能低下症モデルは、薬剤で作成するか、遺伝子改変で作成するかに当たり、いずれも似た結果が出た、という先行論文が出たため、困難な遺伝子操作をやめて薬剤によるモデルマウスを作成し、行動解析を行った上で、脳切片を作成し、大脳皮質・海馬のグリアの形態変化を比較検討した。その結果、甲状腺機能低下症でも、オスでグリア細胞の肥大化が観られ、メスでもわずかな肥大が見られた。ちなみに、甲状腺機能亢進症のメスでは、グリア細胞の矮小化が見られた。 3)マウスの行動変化;甲状腺機能亢進症では、オスでは行動過多が見られ、メスではうつ様症状が見られたのに対し、甲状腺機能低下症では、オスでは行動量の減少が見られ、メスでは特に変化はなかった。 以上のように、甲状腺機能異常症におけるグリア細胞やシナプススパインの形態変化、マウスの行動に性差があることがあらたにわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで若齢の甲状腺機能異常マウスにおける解析を行い、性差があることを解明してきたが、週齢も影響することがわかっており、老齢では、若齢とは異なった結果が出ることがこれまでの予備実験でわかった。甲状腺機能異常と加齢は、認知症のリスクとなることが疫学的にわかっているため、これまで行ってきた性差の研究を老齢マウスにて以下のように遂行する。 1)甲状腺ホルモン異常と加齢の影響:甲状腺機能亢進症モデルマウスのオスの脳を観察すると、若い脳ではミクログリア・アストロサイトの肥大化が見られたのに対し、老齢では逆の効果が見られた。そこで、甲状腺機能亢進症の老齢メスマウスの脳、低下症における老齢のオス・メスの脳についても同様に検討する。 2)甲状腺機能異常症のエクソーム解析: 甲状腺機能異常症における性差と加齢による変化について、性染色体、甲状腺ホルモン受容体、脱ヨード酵素を中心にエクソーム解析を行い、原因を追究する。
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Remarks |
Max Delbruck Center, Berlinにおけるセミナーにて発表し、共同研究打ち合わせを行った。
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Research Products
(18 results)
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[Journal Article] Gliotransmitters and cytokines in the control of blood-brain barrier permeability.2018
Author(s)
Osipova ED, Semyachkina-Glushkovskaya OV, Morgun AV, Pisareva NV, Malinovskaya NA, Boitsova EB, Pozhilenkova EA, Belova OA, Salmin VV, Taranushenko TE, Noda M, Salmina AB.
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Journal Title
Rev Neurosci.
Volume: 29(5)
Pages: 567-591
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Hydrogen gas protects IP3Rs by reducing disulfide bridges in human keratinocytes under oxidative stress.2017
Author(s)
Wu CY, Hsu WL, Tsai MH, Liang JL, Lu JH, Yen CJ, Yu HS, Noda M, Lu CY, Chen CH, Yan SJ, Yoshioka T.
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Journal Title
Sci Rep.
Volume: 7(1): 3606
Pages: 1-11
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Neuropathic pain inhibitor, RAP-103, is a potent inhibitor of microglial CCL1/CCR8.2017
Author(s)
Noda M, Tomonaga D, Kitazono K, Yoshioka Y, Liu J, Rouseau JP, Kinkead R, Ruff MR, Pert CB.
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Journal Title
Neurochem Int.
Volume: S0197-0186(17)
Pages: 30474-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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