2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K08324
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
大野 行弘 大阪薬科大学, 薬学部, 教授(移行) (00432534)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | シナプス分泌 / シナプス小胞タンパク質(SV2A) / 幼若期隔離飼育ストレス / 情動障害 / 攻撃行動 / 側坐核 / Fosタンパク質発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
前シナプス神経終末、後シナプス神経細胞およびアストロサイト傍シナプス終足より構成される3者間シナプスの概念が定着し、シナプス分泌(開口分泌)の機能変化が多くの中枢神経疾患の発症・病態メカニズムに関わることが明らかになってきた。申請者は、シナプス分泌を調節するシナプス小胞タンパク質2A(Synaptic vesicle glycoprotein 2A: Sv2a)に着目し、Sv2a遺伝子にミスセンス変異を導入したSV2A変異(Sv2aL174Q)ラットを開発し、この動物を用いて、神経伝達物質のシナプス分泌異常が、統合失調症、薬物依存、ストレス性疾患など精神疾患の発症脆弱性に及ぼす影響を解析している。本年度は、幼若期に隔離飼育ストレスを負荷した際にみられる情動行動異常の発現変動に関して、以下の検討を行った。 ・実験にはSV2A変異ラットおよびF344ラット(対照)を使用し、各動物に対して生後3週目より5週間の隔離飼育ストレスを負荷した後、社会相互行動および攻撃行動を測定した。その結果、社会相互行動に関してはSV2A変異による影響は認められなかったが、隔離飼育ストレスによる攻撃行動の発現に関しては、SV2A変異による有意な増悪が観察された。 ・さらに、上記動物の脳内興奮部位を探る目的で、神経興奮マーカーであるFosタンパク質の発現を解析した結果、SV2A変異ラットの側坐核および無顆粒島皮質において、Fosタンパク質の部位特異的かつ有意な発現上昇が認められた。 ・本研究結果より、SV2Aの機能低下が幼若期の社会的隔離ストレスによる情動障害を悪化することが明らかとなり、SV2Aが精神疾患の発症脆弱性に影響することが示された。さらに、SV2A変異による情動障害の悪化には、大脳辺縁系の側坐核および島皮質領域における神経興奮が関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・動物の社会行動ならびに攻撃行動に対する隔離飼育ストレスの作用評価法を順調に確立できた。 ・これにより、隔離飼育ストレスによる情動障害(攻撃行動)に対するSV2A遺伝子変異の影響を評価することに成功した。 ・さらに、Fosタンパク質の発現解析によって、上記の情動障害に関連する脳部位を特定することにも成功し、大脳辺縁系の側坐核および島皮質領域に神経活動異常が生じていることを明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
・現在、覚せい剤メタンフェタミンによる興奮行動発現に対するSV2A変異の作用解析を進めている。 ・評価項目としては、単に動物の運動量亢進のみでなく、統合失調症でも異常がみられる驚愕反応プレパルスインヒビション試験も取り入れて、より多角的かつ詳細な解析検討を展開する予定である。 ・研究進捗は概ね予定通りであり、本年度において、SV2A変異ラットの行動表現型の全容を把握でき、次ステップであるSV2Aの機能メカニズム研究に円滑に進むことができると期待される。
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Causes of Carryover |
本年度使用額の端数残金であり、来年度予算に合わせて使用予定である
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Research Products
(8 results)