2018 Fiscal Year Research-status Report
骨改善作用を併せ持つ新規多発性骨髄腫治療薬の創製研究
Project/Area Number |
17K08365
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中山 淳 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (60743408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロライド / 多発異性骨髄腫 / 創薬化学 / Resorcylic Acid Lactone / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会を迎えた日本にとって、加齢により罹患リスクの高まるがんを克服することは急務の課題である。本研究では、多発性骨髄腫に焦点を当て、特徴的な病態の一つである骨破壊性病変をも改善させる新規骨髄腫治療薬の開発を目指した。申請者は一貫してResorcylic Acid Lactoneの一種であるLL-Z1640-2を基盤とした医薬化学研究を展開しており、平成29年度までにLL-Z1640-2の第一世代、第二世代不斉全合成を達成した。さらに、LL-Z1640-2の構造簡略化研究を行なった結果、強力な細胞傷害活性を有する低分子シード分子を獲得することに成功している。 平成30年度では、この第二世代合成経路を利用した天然マクロライドライブラリーの拡充を行い、さらに4種を加えた12種類の14員環マクロライドライブラリーを構築することができた。この中からLL-Z1640-2と同等の抗腫瘍活性を維持しながらも正常造血細胞に対しては細胞傷害活性を示さないイノン含有新規化合物を取得した。その作用機序解明を行なうため、37キナーゼを用いたパネル実験を実施した。その結果、新規化合物はLL-Z1640-2に比べて低いキナーゼ阻害活性を示し、その傾向も異なるものであった。このことから、これらの作用標的は異なるものであり、多発性骨髄腫治療における新たな作用標的の存在が示唆された。 上記の成果をもとに、国内学会発表10件、国際招待講演2件、特許出願1件、査読付き論文2報を平成29年度中に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
LL-Z1640-2の第二世代合成を基盤として、有用な二重結合異性を全種類合成することができた。また、独自のライブラリーから、1)in vitro, in vivoにおいて強力な骨髄腫細胞への傷害活性を示し、2)骨病変の改善作用を有し、かつ3)正常造血細胞への細胞傷害活性が観察されないという新たな誘導体を獲得することができた。これらの特徴から、本化合物は多発性骨髄腫治療において頻発する副作用である血球減少を引き起こす可能性を示唆している。 本イノン含有新規化合物のファーマコフォアを有する低分子化合物群については特許出願を行なっている。現在、さらなる動物実験を行うべく大量供給経路の開発も行っており、新たな合成経路についても確立しつつある。 これらの結果から、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今回見出したイノン含有新規化合物は興味深い生物活性を示していることから、その作用機序解明研究は必須であると考えている。また、本化合物に類似の生物活性を示す構造簡略化体も獲得していることから、研究スピードを考慮に入れ、簡略化体を分子プローブへと変換し、標的タンパク質のつり出し実験を行う。多発性骨髄腫を分子プローブで処理した後、タンパク精製用に開発されたトレーサブルリンカーを用いてタンパク質の生成と蛍光導入を行う。これを電気泳動したのち、蛍光を指標として標的タンパク質の絞り込みを行う。得られた蛍光ゲルを切り出し、プロテオミクス解析を行うことで標的タンパク質に迫る。また、簡略化体の分子プローブ実験と並行して、イノン含有新規化合物にアルキンリンカーを導入した分子プローブ合成も行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度では、細胞実験および動物実験を加速させることを目標としていたが、新規誘導体の合成研究が想像以上に進展したことから、検討に要する物品費を抑えることができた。平成31年度では、動物を用いた毒性試験を進めるためにイノン含有新規誘導体の大量供給を行うため、原料購入に費用がかかることが予想される。このため、平成30年度物品費の繰り越し使用を希望している。
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Research Products
(15 results)
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[Patent(Industrial Property Rights)] 新規イノン化合物及びその用途2018
Inventor(s)
中山淳, 寺町順平, 安倍正博, 難波康祐, 伊藤孝司, 辻大輔
Industrial Property Rights Holder
中山淳, 寺町順平, 安倍正博, 難波康祐, 伊藤孝司, 辻大輔
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
2018-203219