2017 Fiscal Year Research-status Report
脂質性二次伝達物質リン酸化酵素の神経細胞および膵臓・副腎における形態学的機能解析
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17K08507
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
八月朔日 泰和 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00372334)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ジアシルグリセロールキナーゼ / 免疫組織化学染色 / 特異抗体 / 海馬 / 線条体 / 大脳皮質 / 投射ニューロン / 介在ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度はラット・野生型マウスにおけるDGKepsilon (DGKe)の神経細胞内発現および細胞内微細局在解析を蛍光多重染色法及び免疫電子顕微鏡法により解析した。小脳プルキンエ細胞においてはDGKeは樹状突起の形質膜直下の滑面小胞体である表面下槽内に局在することを報告していることから、小脳以外でDGKeが豊富に発現する海馬、大脳皮質および線条体に注目した。その結果各領域におけるDGKeの細胞発現は以下の通りであることが明らかとなった。 低倍率像における解析-海馬においてDGKe免疫反応はCA1領域に強く検出された。小脳小葉におけるDGKeの発現差は認めなかった。さらに小脳でのDGKe免疫反応はプルキンエ細胞層および分子層に認められ、顆粒細胞層では検出限界以下だった。分子層に認められるDGKe免疫反応の多くはプルキンエ細胞の樹状突起表層部に偏在し、粗大な顆粒状に認められた。大脳皮質においてDGKeはII/II層およびV、VI層に発現が認められた。 高倍率像における解析-大脳皮質:DGKe免疫反応は投射ニューロンの細胞体および樹状突起領域に点状に認められた。GAD陽性介在ニューロンにおけるDGKe免疫反応は検出限界以下であった。線条体:線条体投射ニューロン(medium spiny neurons)において、DGKe免疫反応はドーパミンD1およびD2受容体陽性細胞の両者に発現していた。海馬:海馬CA1領域において、DGKe免疫反応は投射ニューロン細胞体および樹状突起に点状に検出された。GAD陽性介在ニューロンにおけるDGKe免疫反応は検出限界以下であった。 以上より、DGKeは生化学的および免疫組織化学的解析により、脳全体に広く発現することが明らかとなった。このことはDGKeが小脳以外の領域でも重要な機能を有する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の研究計画では、以下の目標を挙げた。 ラット・野生型マウスにおけるDGKeの神経細胞内発現および細胞内微細局在解析によりDGKeの発現細胞同定と神経細胞内微細局在を明らかにする。1)蛍光多重染色法による解析:海馬、大脳皮質および線条体について共焦点レーザー顕微鏡で蛍光多重染色法を行う。2)免疫電子顕微鏡法による解析:包埋前(DAB・銀増感)および包埋後免疫電子顕微鏡法を施行する。 当該年度に関して申請者は小脳におけるDGKeの細胞発現および細胞内微細局在を明らかにし、さらに小脳以外でDGKeが豊富に発現する海馬、大脳皮質および線条体においても発現局在を解明した。以上より、当該課題の「研究の目的」に対する達成度は、おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はDGKアイソザイムの膵臓・副腎における発現および微細局在解析と、虚血ストレス条件下における発現および局在変化の解析をラットおよび野生型マウスを用いて行う。 1)DGKアイソザイムの膵臓・副腎における細胞内微細局在解析:膵臓では内分泌部であるランゲルハンス島において、DGKeが構成細胞の核内に発現すること、また副腎においてDGKアイソザイムおよび他のイノシトールリン脂質代謝関連分子が、副腎皮質球状帯細胞と副腎髄質クロム親和性細胞に豊富に発現し、DGKeは細胞膜、DGKzは核内に局在することを申請者は報告している。包埋前DAB・銀増感および包埋後免疫電子顕微鏡法により、DGKアイソザイムの膵臓・副腎における発現細胞内小器官微細局在の解析を行う。 2)虚血ストレス条件下におけるDGKアイソザイム発現および局在変化の解析:申請者の免疫組織化学的解析から、イノシトールリン脂質代謝系シグナル伝達は哺乳動物の膵臓および副腎で駆動すると考えられる。さらに申請者はDGKzが神経細胞では虚血により、膵臓ベータ細胞ではストレプトゾトシンによるDNA損傷ストレスにより、核から細胞質に移行することを報告している。膵臓および副腎について、虚血ストレス条件下におけるDGKや他のPI代謝関連分子の局在変化を検討する。
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