2019 Fiscal Year Research-status Report
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17K08631
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山崎 大輔 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (50422415)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腸管上皮細胞 / 大腸がん / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究において、 Mg2+トランスポーターCNNM4の遺伝子を欠損したマウスでは、AOM/DSSの投与による大腸での炎症関連発がんが促進されることを明らかにしていたが、それらのマウスに形成された腫瘍では筋層への浸潤もまた亢進していた。別の腸発がんモデルApc遺伝子ヘテロ欠損マウスにおいても、CNNM4遺伝子の欠損はがんの浸潤を促進したことから、CNNM4には大腸がんの悪性化を抑制する働きがあると考えられた。そこで、CNNM4遺伝子を欠損したApc遺伝子ヘテロ欠損マウスにできた腫瘍の解析を行った。このマウスにできた腫瘍の薄切切片を作製し、腸に存在する分化細胞のマーカー分子の発現を調べたところ、浸潤先端ではパネート細胞のマーカーであるLysozymeを発現している細胞が集積していることがわかった。この細胞は別の分化細胞である杯細胞を染色する色素アルシアンブルーでも同時に染色されたことから、正常組織には存在しない分泌系の前駆細胞であると考えられた。これらとは異なる分泌系細胞である内分泌細胞のマーカーであるchromograninAや吸収上皮細胞のマーカーのアルカリフォスファターゼは、浸潤先端には存在しなかったことから、未分化ながん細胞が分泌系前駆細胞へ特異的に分化することで、大腸がんの浸潤を促進する可能性が考えられる。一方、遺伝子欠損マウスおよびオルガノイド培養系を用いた解析から、CNNM4の欠損が正常な腸管上皮細胞の分化を妨げることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までの研究において、Mg2+トランスポーターCNNM4がCa2+チャネルのひとつTRPV1を介してEGFRシグナルを調節し腸管上皮細胞の増殖を制御していること、そしてCNNM4遺伝子ヘテロ欠損マウスにおいては細胞増殖制御の破綻が大腸での発がん促進につながったことがわかった。今回は、CNNM4遺伝子ヘテロ欠損マウスにできた腫瘍をさらに解析することで、CNNM4ががんの浸潤を抑制していることが明らかになった。CNNM4遺伝子の欠損ががんの悪性化につながる機構を解析する足がかりとして、CNNM4遺伝子ヘテロ欠損マウスにできた腫瘍の浸潤先端に分泌系細胞のマーカー分子を発現する細胞が集積していることを見出した。また、生体内と同様に腸管上皮細胞の細胞分化を検討することができるオルガノイド培養系を用いてCNNM4は腸管上皮細胞の細胞分化を調節していることを明らかにした。CNNM4遺伝子の欠損はがん細胞を特定方向へと分化させることで、がん細胞の浸潤を促進している可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、CNNM4遺伝子欠損マウスにおいて、腫瘍の悪性化が促進されること、そしてその浸潤部位に分泌系がん細胞が集積していることがわかった。したがって、Mg2+トランスポーターCNNM4がどのような分子機構でがん浸潤を抑制しているのかを知ることにより、マグネシウムががん浸潤とどのように関連しているのかを明らかにできると考えられる。オルガノイド培養系を用いてCNNM4が腸管上皮細胞の細胞分化を制御する分子機構を明らかにするとともに、それらの機構ががん浸潤にどのようにつながっているのかを解明することを目指す。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、CNNM4が細胞分化を制御する分子メカニズムを明らかにするため、CNNM4欠損細胞における遺伝子発現の網羅的解析を行う予定であった。しかしCNNM4遺伝子欠損マウスの腫瘍を解析するなかで、CNNM4が大腸においてがん浸潤を抑制していることが明らかになり、さらにはその浸潤抑制に細胞分化の制御が関与するデータが得られたことから、研究の方向性が変化させたため、予定していた遺伝子解析を保留することにした。次年度ではCNNM4遺伝子欠損によるがん悪性化促進のメカニズムを明らかにするため、まずは細胞レベルで何が起きているのかを明らかにすることを目的とし、CNNM4遺伝子欠損マウスの腫瘍から細胞を回収してその表現型を解析する。
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Research Products
(2 results)