2018 Fiscal Year Research-status Report
非小細胞肺がん細胞の増悪進展におけるRor1-Rifシグナルの機能
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17K08634
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西田 満 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (30379359)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非小細胞肺がん / Ror1受容体型チロシンキナーゼ / Rif低分子量Gタンパク質 / フィロポディア / がん細胞浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までにRor1、Rif、SmgGDSがPC-9ヒト非小細胞肺がん細胞のフィロポディア形成と浸潤を促進する役割を担っていることを明らかにした。本年度は、PC-9細胞におけるフィロポディア形成と浸潤能との関係について検討するため、三次元マトリゲル中を浸潤しているPC-9細胞の形態を観察することとした。そのため、牛胎児血清でコーティングしたカバーガラス上に2倍希釈したマトリゲルの層を形成させ、その上のアクチンの蛍光プローブ(Lifeact-Ruby)を発現させたPC-9細胞を播種した。2時間後に細胞を共焦点レーザー顕微鏡にて観察した結果、カバーガラスの方向にフィロポディアを形成しながらマトリゲル中を浸潤している細胞が観察された。そのようなフィロポディアは、Ror1またはRifをノックダウンすることで阻害された。一方、恒常的活性型Rifを強制発現させたPC-9細胞においては、カバーガラス方向へのより長いフィロポディアが観察された。従来の二次元でのPC-9細胞の形態観察では、フィロポディアは細胞全体に認められ、また、恒常的活性型Rifは細胞全体により長いフィロポディアの形成を誘導した。したがって、三次元マトリゲル中を浸潤しているがん細胞においては、Ror1-Rif経路は極性を持ったフィロポディア形成に寄与していることが明らかになった。次に、分解されると蛍光を発するDQコラーゲンIVをマトリゲルに加えて同様の解析を行った。その結果、DQコラーゲンIVの分解はフィロポディアの周囲において特異的に認められ、Ror1またはRifをノックダウンすることでその分解は阻害された。以上の結果から、PC-9細胞の浸潤において、Ror1-Rif経路は極性を持ったフィロポディア形成を誘導することで、フィロポディア局所での細胞外基質の分解を促進する役割を担っていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に明らかにしたRor1-Rif経路によるフィロポディア形成と浸潤における機能について、平成30年度は三次元マトリゲルを用いた新たな浸潤解析系を構築することでより詳細なデータを得ることができた。特に、がん細胞浸潤における細胞極性とフィロポディア形成および細胞外基質分解との関連に関する重要な成果が得られたことなどから、本課題はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Ror1は発生過程の組織・器官形成においてWnt5a受容体として機能していることが知られているが、非小細胞肺がん細胞においてRor1がWnt5a受容体として機能しているのかについては明らかにされていない。そこで、平成31年度は、Ror1-SmgGDS-Rif経路におけるWnt5aの役割について検討する。また、マウスモデルを用いたRor1-SmgGDS-Rif経路の役割についても検討を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、新たな解析系を用いることで当初予想しなかった重要な成果が得られため、当初計画していた一部の実験を行う必要がなくなった。そのため購入しなかった消耗品によって次年度使用額が生じた。一方、平成30年度の成果から、平成31年度に新たな実験を行う必要性が生じたため、その実験に必要な消耗品の購入に当該次年度使用額を使用する予定である。
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