2017 Fiscal Year Research-status Report
好中球によるマクロファージ変容機序の解明~癌と結核の共通分子基盤を切り口にして~
Project/Area Number |
17K08659
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水谷 龍明 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (50701843)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉田 昌彦 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 教授 (80333532)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 好中球 / S100 / マクロファージ / 慢性炎症病態 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、慢性炎症病態の成立基盤に関する研究を展開していたところ、結核持続感染で生じる肉芽腫においてS100A9 陽性の好中球サブセットが、マクロファージの持続的活性化を引き起こす鍵細胞である可能性を見出した。そこで本研究では、以下2点を目的として研究を実施している。 <I>好中球又はS100A9に依存したマクロファージM2 誘導の分子機序解明 <II>上記<I>で得られた分子機序が、ヒト癌悪性化又は慢性炎症疾患において適用される可能性を検討し、好中球による疾患悪化の分子基盤の解明につなげる。 <I>に関しては、モルモットを基盤にした上述の研究成果を、ヒト・マウスに発展させるために、①ヒト好中球を高純度に分離するラットモノクローナル抗体の作製、そして、マウス研究基盤の先駆けとして、②S100A9遺伝子欠損マウスの作製、③マウスBCG炎症モデルの樹立を行った。各項目の実施状況概要を下記に示す。①ヒト末梢血好中球を抗原とした抗体スクリーニングを実施することで、pan好中球抗体及びそのハイブリドーマ株の樹立に至った。②CRISPR/Cas9システムを活用し、タンパク発現欠損が予測されるin/del変異導入ライン(合計5ライン)のF0世代樹立に成功し、実際にS100A9タンパク質が欠失した3ラインの確立に成功した。③モルモットを利用した結核持続感染を反映する動物モデルとして、マウスBCG投与個体を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①ヒト好中球を利用した好中球特異的抗体の作出 健常人末梢血を用いた密度勾配遠心法から好中球をエンリッチし、CFAとのエマルジョンを作製しラットに免疫し、3週後の免疫ラットの腸骨リンパ節細胞とSP2/0をfusionすることで、ヒト好中球抗体を産生するハイブリドーマクローンを多数樹立した。それらのうち、単球やリンパ球を認識せず、末梢血好中球に対する特異的認識抗体(HG147)を単離した。HG147は、いくつかのpan好中球抗体と競合することが明らかとなったが、抗原同定に至っていない。今後、抗原同定やブロッキング活性に関する実験を進めながら、ヒト好中球:マクロファージ共培養実験の整備を進める。 ②CRISPR/Cas9システムを活用したS100A9遺伝子欠損マウスの樹立 マウスS100A9遺伝子を標的としたgRNAを数種類設計し、詳細な活性評価を経て得られたgRNAを用いてC57/BL6マウス受精卵へインジェクションした。結果として、8種類の異なるin/del変異導入マウス(F0)を得た。そのうち、S100A9タンパク発現が完全に欠失した5ラインのF0マウスを樹立し、うち3ラインについて繁殖作業を継続している。 ③マウスBCG炎症モデルの構築 C57/BL6マウスに対するBCG投与ルートとして、静脈、皮内、皮下、腹腔投与を試みて、それらの組織応答をHE染色やフローサイトメトリーを用いて解析した。特に、標的組織に浸潤する好中球及びマクロファージの極性評価について、時空間的解析を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、S100A9遺伝子欠損マウスを活用したマウス研究を主体として、以下の課題に着手する。 ①S100A9遺伝子欠損マウスを活用したマクロファージの持続的活性化を制御するS100A9新機能の同定 ②好中球・S100A9に依存したマクロファージの持続的活性化を検証するマウス慢性炎症モデルの確立 ①S100A9分子は、好中球に高発現する分子でありながら、好中球における生理機能が明確ではない。S100A9遺伝子欠損マウスにおいて、好中球分化は野生型と変わらない。マクロファージの持続的活性化に影響する遺伝子発現にS100A9が関与する可能性について、オミクス解析を糸口にするなどして、S100A9新機能の同定を試みる。 ②マウスBCG投与モデルの組織解析を進めるとともに、担癌モデルなど他の慢性疾患モデルに関する構築準備を進める。炎症組織における好中球の浸潤、マクロファージの極性等を経時的に定量するための組織学解析を確立する。立した適当なモデル系におけるS100A9遺伝子欠損マウスの表現型を検証することで、S100A9に依存したマクロファージの持続的活性化を生体レベルで実証する。
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Research Products
(1 results)