2018 Fiscal Year Research-status Report
環状ジヌクレオチドによる関節リウマチ誘発機序の解明と新たな治療戦略の創出
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17K08661
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
茂谷 康 徳島大学, 先端酵素学研究所(オープンイノベ), 講師 (70609049)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | STING / BioID / Tamavidin |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫応答を制御する小胞体膜タンパク質STINGは、活性化に応じて小胞体から脱出し、輸送先のゴルジ体でシグナル伝達複合体を形成した後、エンドゾームなどのオルガネラに移行して分解される。この活性化依存的なSTINGの輸送機構を明らかにするためには、STINGと相互作用する因子群を同定することが必要であると考えた。Proximity-dependent biotin identification (BioID) 法は、生きた細胞内で近接するタンパク質や直接相互作用するタンパク質をビオチン標識し、ストレプトアビジンビーズで補足されたタンパク質由来ペプチドを同定する技術である。しかしこの従来の方法では、ほとんどが非ビオチン化ペプチドとして同定されるため、非特異的に吸着したタンパク質由来の非ビオチン化ペプチドとの区別ができないという問題があった。そこで私は、ビオチンとの可逆的結合能を有する新規アビジン様タンパク質Tamavidin2-REVを利用し、ビオチン化ペプチドのみを特異的に濃縮・検出できる改良法を構築した。そしてこの手法を用いてSTINGと相互作用するタンパク質のスクリーニングを行い、2565個のビオチン化ペプチドを同定した。定常状態ではビオチン化が認められたもののほとんどが小胞体タンパク質であったのに対し、活性化後には小胞輸送に関わるタンパク質やゴルジ体に局在するタンパク質のビオチン化を検出することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画ではCBLL1やAP3B1タンパク質に着目していたが、STINGの輸送を制御する結果は得られなかった。そこでSTINGと直接相互作用する因子をスクリーニングするため、あらかじめ対処法として計画していたBioID法を行なった。しかしながら、古典的なBioID法にはいくつかの問題点があり、これを克服するため、バックグラウンドノイズの低い改良型BioID法の構築に成功した。これにより、STINGの輸送過程におけるタンパク質間相互作用を解析するための基盤技術を確立できたと考えられ、今後の研究の進展が期待できる。この新たな手法については当初計画していなかったが、学会発表を行なうとともに論文も投稿中であるため、予想以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回確立した改良型BioID法を用い、STINGと相互作用する因子をより大規模に同定する。そして相互作用因子のノックアウト細胞をCRISPR/Cas9システムによって作製し、STINGが輸送されてから炎症誘導に至る過程において、どのステップに関与しているのかを明らかにする。具体的には、免疫染色法によってSTINGが小胞体、ゴルジ体、エンドゾームなどのオルガネラへの移行に異常が生じるのかを調べる。また、炎症誘導についてはリアルタイムPCRやウエスタンブロット、ELISA法によってサイトカインの発現誘導の変化を調べる。これらの解析によってSTING輸送機構の枠組みを完成させる。また、前年度から継続して行なっているSEMA4Dのゲノム編集マウスの解析についても進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は新しいBioID法の構築という点では予想を上回る成果を挙げることができたが、これに多くの時間を費やしたため、予定していたSTING相互作用因子の機能解析が遅れてしまった。この解析は次年度で重点的に行なう必要性があり、その費用を次年度に回す必要性が生じた。使用計画としては、大規模なBioiD法の実施や同定した個々の分子機能の解析に必要な消耗品費として使用する。
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Research Products
(3 results)