2018 Fiscal Year Research-status Report
β4インテグリンによる薬剤耐性機構の解明とその克服
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17K08665
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
苅谷 慶喜 福島県立医科大学, 医学部, 准教授 (00458217)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬剤耐性 / 癌 / β4インテグリン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度に実施した主な研究として以下の三つが挙げられる。 1)薬剤耐性膵癌株の樹立:膵癌細胞株Panc-1に対して抗がん剤であるドキソルビシン、パクリタキセル、ゲムシタビンを処理した。段階的に濃度を上げていき、6ヶ月後にそれぞれの薬剤耐性株を得ることができた。ドキソルビシンとゲムシタビン耐性株は、親株に比べて線維芽細胞のような形態をしていた。一方、パクリタキセル耐性株は親株に比べて大きな細胞体を持っていた。別な膵癌細胞株であるMIAPaca2でも同様の薬剤耐性株樹立を試みたが、現在のところ目的の細胞株は得られていない。樹立したゲムシタビン耐性Panc-1株のマトリゲルへの浸潤能を測定した。その結果、親株に比べ、耐性株で浸潤能が促進していた。 2)β4インテグリン発現Panc-1細胞の樹立:β4インテグリン発現による薬剤耐性獲得の可能性を調べるために、野生型―, 接着欠損型―, 細胞内シグナルドメイン欠損型―β4インテグリンおよびcontrol lacZを発現させたPanc-1細胞株を樹立した。各細胞の細胞表面β4インテグリン発現はFACSにて確認した。 3)β4インテグリンノックダウン膵癌細胞株T3M4樹立の試み:上記1)を踏まえ、内在的にβ4インテグリンを発現している膵癌細胞株T3M4において、shRNAを用いてβ4インテグリンノックダウンを2回試みた。しかしながら、β4インテグリンが優位にノックダウンされている細胞株は樹立できなかった。ちなみに同様の操作で皮膚癌細胞株A431ではノックダウン細胞を樹立できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は薬剤耐性株を3種類樹立できた。これは本研究の命題である、薬剤耐性とβ4インテグリン発現の関係性を調べる上で非常に有効なツールとなりうる。さらに、ゲムシタビン薬剤耐性株は浸潤能が高いことが明らかにできた。また、前年度において樹立できなかった膵癌細胞株MIAPaca2でのβ4インテグリン発現細胞株を別な膵癌細胞株Panc-1を用いて樹立することができた。これらはほぼ申請書の計画通りである。したがって、現段階において研究は概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
樹立できた薬剤耐性株におけるβ4インテグリンの発現をFACSおよびウェスタンブロットにより調べる。同時に他のインテグリンについての変化も調べ、β4インテグリンに特異的な現象なのかについての検討を行う。野生型および変異型β4インテグリン発現細胞株の薬剤耐性能を生存曲線を用いて調べる。ノックダウン細胞の樹立は難しいようなので、ゲノム編集によるノックアウト細胞株の樹立を試みる。また、β4インテグリンの発現に伴い変化するmiRNAやエクソソームについてリアルタイムPCRやウェスタンブロットなどを用いて解析し、薬剤耐性とmiRNAやエクソソームの関係について調べる。
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Causes of Carryover |
抗体や器具類の再利用により経費を抑えることができたため。また、予定していた動物実験を次年度に行うことにしたため。次年度使用額については必要な抗体や実験動物の購入に使用する予定である。
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Remarks |
福島県立医科大学研究者データベース http://www.fmu.ac.jp/kenkyu/html/1118_ja.html
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