2018 Fiscal Year Research-status Report
圧付加による神経変性:水柱下培養装置を用いた分子基盤の解析
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17K08680
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
萩山 満 近畿大学, 医学部, 助教 (60632718)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 変性 / 細胞形態 / 細胞骨格 / Hippo経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
緑内障や水頭症、腸閉塞や結石症などでは内圧上昇によって神経や粘膜の変性が生じる。その圧の閾値は20-30 cm水柱と低圧で、臓器によらずほぼ一定である。この軽微で慢性的な圧付加に対する細胞応答の分子基盤は未解明である。 本研究では、独自に考案した数10 cm高の水柱下で細胞を培養する上下2チャンバー装置を用いて、この閾値相当の水圧が上皮細胞の増殖に及ぼす影響を調べた。MDCK腎上皮細胞を上チャンバーの半透膜上で培養すると2 cm水柱下では円柱状の形態を示した。15、30、50 cmと付加圧を増加させると、細胞倍化時間は有意に延長し、細胞は扁平化して体積は1.5倍になった。NCI-H441肺上皮、Caco-2腸上皮細胞でも同様の結果が得られた。上皮由来ながら球状の形態を取る細胞(KATO-III等)や紡錘形の間葉系細胞(NIH3T3等)では倍化時間・細胞形態とも有意な変化はなかった。円柱形上皮細胞のファロイジン染色及びHippo経路分子のウエスタン解析を行った。50 cm水柱下で体積増加に伴ってアクチン線維の分布が疎になったが、1細胞当たりの総量は変化しなかった。またHippo経路の主要タンパク質であるYAPのリン酸化が亢進し、細胞質局在量が増加していた。RNAシークエンスでは、50 cm水柱下のMDCK細胞で中間系フィラメントであるkeratin 14の12倍発現上昇が同定され、免疫染色及びウエスタン解析でも確認された。 以上より、円柱形の上皮細胞ではその増殖に細胞形態と細胞骨格とが深く関わることが明らかになった。内圧上昇はこの連関及びHippo経路に直接的に作用し粘膜変性を惹起すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するために、半透膜付き培養インサートに細長い円筒を垂直に接続することにより、円筒内の水柱の高さ分の圧力を細胞が受ける2チャンバー培養装置を作製した。この装置を用いて細胞を培養し、上チャンバー(半透膜直上)のpH・O2・CO2ガス分圧を測定した。上チャンバー内のpH・O2・CO2ガス分圧は下チャンバーと変わらず、圧付加による影響を評価することができる培養系を確立することができたため。 圧上昇に伴う神経変性に接着分子cell adhesion molecule 1(CADM1)の酵素的切断が関与することを報告した。さらに粘膜変性についてもこの培養装置を用いて研究を行った。円柱状の形態を示す上皮細胞は付加圧を増加させると、細胞倍化時間が有意に延長することを見出し、細胞形態等が関与すると示唆することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
A.静的圧力に対する神経細胞変性の分子基盤 遺伝子・蛋白発現の網羅的解析:水柱下培養後の細胞からRNA、及び蛋白を抽出し、水柱の高さが異なる2群間(例えば10 cmと40 cm)で、 遺伝子発現解析(DNAマイクロアレイ)及びプロテオーム解析(2D-DIGE+LC-MS/MS)を行う。得られたデータを基にパスウェイ解析等を行い、静的圧力による細胞変性・アポトーシスの分子経路全体像の把握を目指す。 B.内圧上昇による神経変性のin vivoでの実態解析 眼内圧上昇による網膜神経節細胞変性(緑内障モデルDBA/2Jマウス) ①本マウスでは6~12ヵ月齢で眼圧が上昇する(ピークは9ヵ月で約30 cmH2O)。次の月齢時に手持ち眼圧計(トノラボ)にて眼圧を測定し、網膜を採取する。②組織学的な手法により、網膜神経節細胞の数・アポトーシス率(TUNEL陽性率)、網膜神経節細胞の軸索の変性、数(密度)や長さを定量し、眼圧の変化及びCADM1発現や候補分子の発現との相関性を調べる。③凍結切片のマイクロダイセクションにて採集した網膜神経節細胞はCADM1の2種類のスプライシング・アイソフォーム(上皮型と神経型)を発現しており、スプライシングへの影響も疑われるので、RT-PCRを行い、検証する。④Aの網羅的解析にて得られた新規遺伝子群・分子群についても発現検討を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画において本研究計画の1年目、2年目においては、細胞培養実験が主体となり、また現有の設備だけでは少し手狭になる可能性があったので、標準的なCO2培養器及びクリーンベンチ1台の新規購入を希望していた。本年度は現有の設備整備がうまくいかずまだ購入に至っていないため。今後、確立した水柱下培養装置の作製も行い、現有の設備を拡大して実験を進める予定である。
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Research Products
(6 results)