2018 Fiscal Year Research-status Report
EBウイルス再活性化による自己抗体産生機序の解明とバセドウ病の予防・診断・治療
Project/Area Number |
17K08694
|
Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
長田 佳子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50304209)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 一彦 鳥取大学, 医学部, 教授 (30180962)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | Epstein-Barr virus (EBV) / IgG4 / 女性ホルモン / 再活性化 / 抗体産生 / バセドウ病 / AID / TRAb |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barrウイルス(EBV)はほとんどの成人に潜伏感染しているヒトヘルペスウイルスである。主としてB cellに潜伏感染し、その再活性化により宿主B cellの形質細胞への分化と抗体の分泌が誘導される。EBV再活性化に誘導される抗体産生は、胚中心・骨髄を介する抗体産生とは別の抗体産生経路である。 平成30年度我々はEBV再活性化に誘導される抗体産生においては、すでに報告したIgG, IgM, IgEのほかにIgG4の産生もおこることを観察した。我々はバセドウ病の切除標本においてリンパ球浸潤部位では、EBV感染細胞とIgG4陽性細胞が同部位に存在し、さらにEBV再活性化誘導した末梢血単核球の培養上清においてIgG中のIgG4の割合は、血清で報告されているよりも著明に高く、EBV再活性化に誘導される抗体産生系はIgG4のソースである可能性が高いことを示した(Nagata et al, Viral Immunology 31 (8): 540-547, 2018)。 バセドウ病は女性に多い疾患である。我々はEBV再活性化に誘導される抗体産生系に対する女性ホルモンの影響について検討し、エストラジオール高濃度(妊娠レベル)ではIgMと、バセドウ病の原因自己抗体、TSHレセプター抗体(TRAb)の産生が減少すること、またこのときEBV感染Bリンパ球は形質細胞に分化し抗体産生能を保ったまま、細胞溶解をおこさずに生き延びていることを示した(Hara et al, Viral Immunology 31 (7): 1-6, 2018/ Hara et al, Yonago ACTA Medica, revised)。 また我々はEBV再活性化に誘導されたTRAbが、甲状腺濾胞上皮細胞からの抗原流出を起こし、バセドウ病発症、増悪の機序に深く関連する知見を得、米国内分泌学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EBV再活性化に誘導される抗体産生ではIgGよりもIgMが優位に産生されるが、これはTRAbのアイソタイプでも同様であった。TRAbの各アイソタイプの機能解析を行うため、TRAbによる甲状腺濾胞上皮細胞からの抗原流出について検討したところ、TRAb-IgG, TRAb-IgMの差異、またEBV再活性化に誘導されるTRAb産生とバセドウ病発症、増悪の機序に深く関連する知見を得た。このためTRAbの甲状腺濾胞上皮細胞に対する作用の機序について、さらに検討する必要性が生じた。 また、EBV再活性化に誘導される抗体産生においては、すでに報告したIgG, IgM, IgEのほかにIgG4の産生もおこることが観察され、EBV再活性化がIgG4関連疾患の原因的役割をはたしうることを示した(Nagata et al, Viral Immunology 31 (8): 540-547, 2018)。 これらは当初の計画にはなかったものを含むため、初期の内容が遅れることとなったが、得られた知見は重要なものであった。
|
Strategy for Future Research Activity |
TRAbの甲状腺濾胞上皮細胞に対する作用について検討を進め、EBV再活性化に誘導されるTRAb産生とバセドウ病発症、増悪の機序を示す。 EBV感染に対するワクチン作成、EBV再活性化抑制のためのsiRNA薬を行う上で、EBVの感染経路をふくむ感染様式について、さらに検討する必要が生じたため、まずこちらを解明すべく、臍帯血を含めた、各年齢層の小児におけるEBV感染と抗体産生について検討をおこなうこととした。
|
Causes of Carryover |
当初の研究計画では、前年度までに次世代シークエンサーを用いたEBVゲノムシークエンスの一部、およびEBV再活性化抑制を期待できるsiRNAの作成を行う予定であったが、それに先立って行うべきEBV感染経路についての実験が必要となったことや、その他諸般の理由により、行っていない。このため次年度使用額が生じる結果となった。 今年度は当初の計画にはなかった、EBV再活性化に誘導されたTSHレセプター抗体の甲状腺濾胞上皮細胞に対する作用、および臍帯血を用いたEBV感染経路の解明にも取り組むが、これらの実験に用いるブタ甲状腺初代培養細胞の購入経費、および論文のOpen Access経費等に上記の経費を使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)
-
[Journal Article] Epstein-Barr Virus Lytic Reactivation Induces IgG4 Production by Host B Lymphocytes in Graves' Disease Patients and Controls: A Subset of Graves' Disease Is an IgG4-Related Disease-Like Condition.2018
Author(s)
Nagata K, Hara S, Nakayama Y, Higaki K, Sugihara H, Kuwamoto S, Matsushita M, Kato M, Tanio S, Ishiguro K, Hayashi K.
-
Journal Title
Viral Immunoogy
Volume: 31 (8)
Pages: 540-547
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-