2019 Fiscal Year Research-status Report
EBウイルス再活性化による自己抗体産生機序の解明とバセドウ病の予防・診断・治療
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17K08694
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
長田 佳子 鳥取大学, 医学部, 助教 (50304209)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 一彦 鳥取大学, 医学部, 特任教員 (30180962)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | Epstein-Barrウイルス(EBV) / 再活性化 / 抗体産生 / バセドウ病 / 自己免疫疾患 / TSHレセプター抗体(TRAb) |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barrウイルス(EBV)はほとんどの成人に潜伏感染しているヒトヘルペスウイルスである。主としてB cellに潜伏感染し、その再活性化により宿主B cellの形質細胞への分化と抗体の分泌が誘導される。EBV再活性化に誘導される抗体産生は、胚中心・骨髄を介する抗体産生とは別の抗体産生経路である。 EBVの症候性の初感染である、伝染性単核球症の急性期の血清に種々の自己抗体が検出されることが以前より報告されている。平成31年度(令和1年度)我々は29名の小児を対象として、EBVの無症候性の初感染においては自己抗体が検出されるのかどうかについて検討し、EBV初感染ではそれが無症候性であっても、バセドウ病の原因自己抗体であるTSHレセプター抗体(TRAb)の産生がおこることを示した。 また今回、健常者10人、バセドウ病患者9人の末梢血単核球を用いて、EBV再活性化刺激を行い、培養上清中に放出されたTRAb-IgGとTRAb-IgMをELISAにて定量したところ、TRAb-IgMが優位に産生された。これは以前の我々の結果を支持し、TRAb-IgMはEBウイルス再活性化に誘導されて産生されたものであることが示された。これらの結果を用いて2月28日、「甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体アイソタイプ測定を用いたバセドウ病の病態診断キット及びバセドウ病の病態の診断方法」の名称で特許登録となった(特許第6667806号)。 またこれらの内容により、日本医事新報社より「臨床で使える!甲状腺疾患診療のテキスト」の一部を執筆し、日本内分泌学会・臨床内分泌代謝Updateでセミナーを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回の研究により、従来の「胚中心・骨髄を介する抗体産生系」とは別の、「EBV再活性化に誘導される抗体産生系」が存在すること、これらはEBV初感染においても作動し、それが症候性の伝染性単核球症である場合のみでなく、無症候性の初感染であっても抗体産生がおこることが示された。 この系によって産生される抗体はIgM優位であることが、さらにはっきりした。IgG型のTSHレセプター抗体(TRAb)は甲状腺ホルモン産生を刺激することが知られているが、EBVが産生するIgM-TRAbは甲状腺濾胞上皮に対して、どのような作用を持つのか、結果が集積しつつある。 小児におけるEBV初感染の検討により、当初の目標のひとつであった、バセドウ病に特異的なEBV株およびEBV遺伝子多型を明らかにする、ということに関して、まず感染経路を再検討する必要が出てきたため、これについても検討を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はTRAbの甲状腺濾胞上皮細胞に対する作用について、TRAb標準品を用いて検討したが、今後は実際のEBV感染細胞の培養上清を用いて検討を進め、EBV再活性化に誘導されるTRAb産生とバセドウ病発症、増悪の機序を示す。 ワクチン開発、siRNA薬開発を目的としたEBVのシークエンス解析については、感染経路をふくむ感染様式について、さらに検討する必要が生じたため、まずこちらを解明すべく、臍帯血を含めた、各年齢層の小児におけるEBV感染と抗体産生について検討をおこなう。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では、前年度までに次世代シークエンサーを用いたEBVゲノムシークエンスの一部、およびEBV再活性化抑制を期待できるsiRNAの作成を行う予定でしたが、それに先立って行うべきEBV感染経路についての実験が必要となったことや、その他諸般の理由により、行っておりません。このため補助事業期間延長申請を行いました。 今年度は当初の計画にはなかった、EBV再活性化に誘導されたTSHレセプター抗体の甲状腺濾胞上皮細胞に対する作用の検討を実際の培養上清から分離した抗体によって行うこと、また臍帯血を用いたEBV感染経路の解明を行い、これらの実験に用いるブタ甲状腺初代培養細胞および検出用抗体の購入経費、および論文のOpen Access経費等に上記の経費を使用する予定です。
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Research Products
(6 results)