2017 Fiscal Year Research-status Report
新規NF-κB抑制因子による炎症性腸疾患における慢性炎症の制御機構
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17K08795
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
川村 宏樹 新潟医療福祉大学, 医療技術学部, 准教授 (20333495)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 雅也 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50334678)
高橋 雅彦 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (80377192)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 炎症 / USP10 / サイトカイン / 炎症性腸疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
【目的】 本研究は新規NF-κBの抑制因子のUSP10による炎症性腸疾患における慢性炎症の分子機構を解明して、臨床応用の基盤研究を目的とする。平成29年度(1年目)はUSP10ノックダウン細胞株を用いて、USP10がNF-κB を介してマクロファージやT細胞の機能にどのような影響をあたえるか検討した。 【成果】 初めにマクロファージ細胞株sh-USP10 RAW264.7細胞とsh-NT RAW264.7細胞の増殖能を検討した。その結果、sh-USP10 RAW264.7細胞はsh-NT細胞に比べ、約半分の増殖能しか有していなかった。サイトカイン産生能を検討した結果、無刺激でもTNFα、MIP-2有意に増加した。LPS刺激をおこなった結果、MIP-2産生で有意な上昇が認められたが、TNFαでは有意な差は認められなかった。一方、IL-6産生は刺激の有無に関係なく、差は認められなかった。このUSP10の増殖能やサイトカイン産生への影響は、マクロファージ細胞株J774細胞を用いたUSP10ノックダウン細胞でも同様であった。またsh-USP10 RAW264.7細胞はsh-NT細胞に比べて、細胞表面のMHCクラスⅠとDectin -1の発現が増加していた。 にT細胞株で検討した結果、sh-USP10 Jurkat細胞はsh-NT Jurkat細胞に比べ、約半分の増殖能しか有していなかった。またPMA+Ionomycin刺激によるサイトカイン産生能を検討した結果、IL-2、TNFα、IFNγの産生が優位に低下していた。次にUSP10存在下におけるNF-κB活性をについて、レポータージーン解析で検討した。その結果、Tax存在下におけるNF-κBプロモーター活性はUSP10によって抑制された。さらにNF-κB p65サブユニット存在下においても同様に顕著な転写抑制を誘導した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は当初、培養細胞を用いてUSP10がNF-κB を介してマクロファージの機能と炎症反応にどのような影響をあたえるか検討する予定であった。研究を進めていく中で増殖能やサイトカイン産生能でも著明な差が認められ、これは予想以上の成果であった。そこで、当初の予定を変更して、他のマクロファージ細胞株でも検討して同様な結果を得たことから、USP10がNF-κBを介した活性は、細胞株特異的ではなく共通した所見であることが示唆された。更にT細胞株にも広げて検討して新たな知見を得ることができた。これの点は当初の計画以上に進展したと考えられる。しかしながら予定外の研究を進めた結果、炎症反応に関する研究が遅れぎみである。よって研究全体を考えれば、おおむね順調に進展しているとい判断は妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の進行状況や結果を踏まえて今年度は、1.細胞内でのUSP10のNF-κBに対する制御機構の解明、2.USP10とNF-κBの関係する炎症反応への影響、3.炎症性腸疾患マウスモデルでの解析の3つを中心に研究に取り組む。 1.細胞内でのUSP10のNF-κBに対する制御機構の解明: マクロファージ細胞株でもレポータージーン解析をおこないNF-κBプロモーター活性の測定を実施する。加えて、どの様な経路でNF-κBを制御しているのか、論文等で可能性が伝えられている幾つかの分子の関与を検討する。 2.USP10とNF-κBの関係する炎症反応への影響: IL-1βを中心とした炎症性サイトカインへの影響を検討する。またUSP10活性化薬の一つであるレスベラトロールをin vitroの実験系にしようして、炎症抑制作用を検討する。 3.炎症性腸疾患マウスモデルでの解析: 昨年度のin vitroでの実験で得られた結果が、モデルマウス由来のマクロファージやT細胞でも同様や否かUSP10とNF-κBを中心とした解析をおこなう。
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Causes of Carryover |
本報告書の「7.現在までの進捗状況」に記入した通り、USP10がマクロファージ細胞株やT細胞株に対する機能解析が当初の予定より大幅に進み研究時間の多くの割合を使用した。それに伴い、炎症反応解析やマウス関連の実験時間が少なくなったので、関連する試薬代などの経費が減少した。今年度は「8.今後の研究の推進方策」に記載した通り、炎症解析やマウス関連の解析をおこい今年度は繰り越した経費を使用する予定でいる。
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