2018 Fiscal Year Research-status Report
糞線虫感染排除後の肺に見られる高反応性ILC2に関する研究
Project/Area Number |
17K08813
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
安田 好文 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (50333539)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | メモリー様ILC2s / 寄生虫感染防御 / 好酸球性肺炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
糞線虫Strongyloides venezuelensis(Sv)感染マウスは、感染排除後も長期間に渡りグループ2自然リンパ球(ILC2s)が肺に残り、次の感染に備えていることを代表者は見出している。また昨年度の研究で、Sv感染経験マウスはパパインに対しても強く反応することを確認している。今年度はSv感染マウス肺のILC2sの性質について検討した。 ILC2sがSv感染後何日目まで増殖するかを検討するため、Sv感染後経時的にEdUを投与し、フローサイトメトリーでEdUを取り込んだILC2数を調べた。その結果、EdU陽性のILC2sは感染8日目で最大となり、排虫完了後の22日目にはほぼ認められなくなった。このことから、Sv感染経験マウスの肺にいるILC2sは持続的に増殖しているのではない事がわかった。一度増えた細胞が肺の中にとどまってメモリー様の細胞として次の感染等に備えていると考えられる。 次にSv感染マウスの肺のILC2sの性質がナイーヴマウスILC2sとどのように異なるかを調べるため、非感染マウスとSv感染1ヶ月後のマウスからILC2sを分取し、PMA/Ionomycinで刺激してサイトカイン産性能をフローサイトメトリーを用いた細胞内サイトカイン染色法で検討した。Sv感染経験マウスILC2sでは対象群と比較して強いIL-5/IL-13産性能が認められた。 さらにin vivoでのILC2sの反応性を検討した。Sv感染経験マウスでは別の腸管寄生線虫Nippostrongylus brasiliensis(Nb)感染後、2日以内に肺ILC2sの増加とILC2sのIl13 mRNA発現の上昇が見られ、それと相関して肺好酸球数が増加した。 以上よりSv感染後の肺ではILC2sがメモリー様細胞として存続し、次の感染に対して高い反応を示して生体防御に働くことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
寄生虫感染後の肺のILC2sが高反応性の細胞であることを証明できた。現在、種々のサイトカインの影響について検討している。また寄生虫感染マウスおよび非感染マウスのILC2sについて遺伝子発現解析を行っており、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
種々のサイトカインおよびその受容体の欠損マウスや中和抗体を用いてILC2のメモリー様細胞への分化に対する影響を検討し、どの様な刺激でILC2sがメモリー用細胞に分化するかを明らかにする。またメモリー化に関与が期待される転写因子を見出しており、その欠損マウスを用いて当該転写因子のILC2sの機能における役割を証明する。さらに網羅的な遺伝子発現解析によりメモリー様ILC2sの特徴を明らかにし、有効な検出方法、誘導、あるいは抑制方法を開発し、感染症治療やアレルギー性疾患治療における新たな方策を提示する。
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Causes of Carryover |
当該助成金はILC2sの網羅的遺伝子発現解析を行うための資金として検討していたが、創薬等先端技術支援基盤プラットフォーム(BINDS)にて解析していただくことになったため未使用額が生じた。当初はマイクロアレイによる解析を検討していたが、より情報量の多く、single cellで解析できるRNAseqにて解析することにしたが、助成金だけでは不足のためBINDSに応募した。当該助成金は次年度助成金と合わせ、解析結果に基づくILC2sの機能解析に用いる。
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