2017 Fiscal Year Research-status Report
プロテオーム解析とライブセルイメージングによるマスト細胞分泌顆粒の分泌経路の解明
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17K08890
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
田中 正太郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (90380667)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分泌顆粒 / マスト細胞 / セルソーター |
Outline of Annual Research Achievements |
【具体的内容】モデル細胞であるラットマスト細胞株RBL-2H3について、蛍光タンパク質と分泌顆粒結合タンパク質(Vamp8,Rab27a)および分泌顆粒膜タンパク質(CD63,VMAT2)のキメラタンパク質を安定に発現するクローンを調製した。これらの内2クローン(Vamp8およびRab27a)について、超遠心による密度勾配遠心およびセルソーターによる分取条件を最適化した。得られたサンプルを二次元電気泳動に供じ、明瞭なシグナルを示したタンパク質スポットについて、質量分析(委託)を行った。また同サンプルについて、ウエスタンブロッティング法にて内在性の分泌顆粒結合タンパク質および内腔タンパク質の構成を調べた。さらに初代培養細胞での試験準備として、ラット腹腔マスト細胞の調製系を構築した。【意義】以上の成果は、交付申請書に記載したH29年度研究計画の内容をほぼ達成しており、スケジュール通りの進行となっている。【重要性】セルソーターによるマスト細胞分取のプロトコールを決定できたことで、本申請の基盤技術が成立した。加えて、実験操作的な進歩として、技術の適用範囲や限界、コツや難しさなどの経験を得た。本技術は蛍光標識法やオルガネラ調製法、対象細胞の変更によって様々な応用が考えられるため、技術的な習熟が今後の研究基盤となる。【発表など】H29年度日本細胞生物学会大会、H29年度日本生化学会大会で発表(ポスター)。所属機関付属研究施設の年度紀要に研究報告を寄稿。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通りの進行である一方、セルソーターを用いた分泌顆粒分画について、技術的課題が明確化した。具体的には、質量分析で要求されるタンパク質量の確保(調製)が予想以上に困難であったという点である。委託による質量分析の結果は、理論的には解析必要量の範囲に収まるよう調製したにもかかわらず、量不足による解析不良というものであった。そのため以降は十分量を確保するための検討を進めた。 セルソーターはその原理上、分画対象がある程度希薄な溶液について有効に機能し、対して含有量が増すほど分離度は低下する。そのため、分泌顆粒の収量の確保を目指して扱う細胞数を増やしたところ、分画した液中への不要な細胞内小器官の混入率が増大し、結果として分離度が顕著に低下した。対策として細胞破砕液を希釈したが、分画時間の大幅な延長とともに、装置の流路の汚染を招いた。このような状況を克服し、次の段階である質量分析に進むためには、現在のソーターの前処理(超遠心による密度勾配分離)に加え、分泌顆粒の含有量を高めるような何らかの工程を追加する必要があるという結論に至った。
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Strategy for Future Research Activity |
上記の問題の解決として、抗体を利用した分取・濃縮法を検討している。現在の分画対象である分泌顆粒は、蛍光タンパク質によって標識化されている。この蛍光タンパク質に結合する抗体を磁気ビーズ表層に固定しておき、細胞破砕液(あるいは密度勾配分画後の溶液)と混和することで、蛍光タンパク質陽性の細胞内小器官のみを選択的に回収する。すでに色素細胞の色素顆粒(メラノサイト)研究で同様の報告があり、参考としている。現在は細胞の調製条件と、好適な抗体の選択を進めている。計画が良好に進展するならば、分泌顆粒の純度がある程度高いサンプルが調製されると考えられるため、以降のソーター分画の処理効率の向上が期待される。また複数の抗体を組み合わせることで、磁気ビーズ分画の段階で、分泌顆粒のある程度の分類が達成できると考えている。計画の合否判断は、①磁気ビーズへの蛍光標識化分泌顆粒の特異的な吸着②分泌顆粒関連タンパク質の有意な濃縮である。それぞれ①顕微鏡によるビーズと分泌顆粒の結合の直接的観察②ウエスタンブロッティングによる各種マーカータンパク質の有無の確認で行う。
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Causes of Carryover |
端数により繰り越し。次年度以降の物品費に充てる。
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Remarks |
東京女子医科大学総合研究所紀要37、2017年度報告「セルソーターによるマスト細胞分泌顆粒の回収とタンパク質構成の解明」田中正太郎、中村史雄
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