2019 Fiscal Year Research-status Report
ストレス性痛覚過敏-下行性疼痛調節系の機能変化とエピジェネティクスの関与―
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17K09038
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
井辺 弘樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60326353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 晃久 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (20225022)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ストレス / 痛覚過敏 / 下行性疼痛調節系 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.慢性ストレス後、機械的感覚過敏を示したラットにおいて、下行性疼痛調節系の活動をコントロールする高位中枢での転写因子の発現とエピジェネティクスの関与を検討した。ラットに3週間の慢性拘束ストレスを負荷するとラット後肢に有意な機械的感覚過敏が生じた。そして、内側視索前野で pCREB 陽性細胞の有意な増加と内側視索前野、扁桃体基底外側核、島皮質でアセチル化ヒストンH3 陽性細胞の有意な増加が認められた。さらに、内側視索前野の pCREB 陽性細胞数や、アセチル化ヒストンH3 陽性細胞数とラットの機械的感覚閾値の間に負の相関関係があることが確認された。これら結果は、国際雑誌に論文として掲載された。 2.慢性ストレス後の痛覚過敏において、下行性疼痛調節系での活動変化とエピジェネティクスの変化を検討した。ラットに3週間の慢性拘束ストレスを負荷すると吻側延髄腹内側部で MeCP2 陽性細胞数の有意な増加が認められた。しかし、5HT や GABA 含有神経細胞では MeCP2 の有意な増加は認められなかった。現在、データーの解析中である。 3.慢性ストレス後の下行性疼痛調節系における組織構築の変化やエピジェネティクスの変化を調査するため、慢性ストレス負荷後、脳を摘出し、転写調節関連タンパク質 ( MeCP2、G9a ) などの Western blot を行った。また、解析 Kit を用いて DNA メチル化の調査を行い。ラットに3週間の慢性拘束ストレスを負荷すると吻側延髄腹内側部で DNA メチル化が減少するというデーターが得られ、さらに検討を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
慢性ストレス後、機械的感覚過敏を示したラットにおいて、下行性疼痛調節系の活動をコントロールする高位中枢の中で、内側視索前野に著明な変化が生じることを明らかにし、国際雑誌に論文として掲載された。さらに、ストレス性痛覚過敏を生じたラットにおいて、吻側延髄腹内側部 GABA ニューロンでアセチル化ヒストン H3 の発現が有意に増加するという前年度、確認された事象に、さらにデーターを加え関連する学会で報告した。計画はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.RatTph2 遺伝子断片(もしくはスクランブル配列)を含む short hairpin RNA (shRNA) プラスミドをエレクトロポレーション法を用いてラットの吻側延髄腹内側部(RVM)に遺伝子導入を行い、TPH の発現変化を検討する。 2.慢性ストレス後の痛覚過敏において、下行性疼痛調節系やその活動をコントロールする高位中枢での活動変化とエピジェネティクスの変化を調査するため、引き続き、コントロール、慢性ストレス負荷ラットの下行性疼痛調節系やその活動をコントロールする高位中枢において、acetyl Histone H3、MeCP2、pCREB、c-Fos、delta-FosB などの発現を調査する。また、これらの変化がどのような細胞で生じているか調べるために二重染色を行う。 3、慢性ストレス後の下行性疼痛調節系やその活動をコントロールする高位中枢における組織構築の変化やエピジェネティクスの変化を調査するため、慢性ストレス負荷後、脳を摘出し、シナプス関連タンパク質( PSD95 )、転写調節関連タンパク質 ( acetyl Histone H3、MeCP2、DNMT、REST ) などの Western blot を行う。有意差が確認されたタンパク質に対しては免疫組織染色を行い、画像上どの領域で変化が著明であるのか、組織学的検討を行う。さらに、ヒストンのアセチル化と DNA メチル化・ヒドロキシメチル化は解析 Kit を用いて調査する。
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Causes of Carryover |
当該年度に実施予定の実験の一部を行うことが出来なかったため、抗体や実験動物などの購入費用に余りが生じたため。
western blot、免疫組織染色等に用いる抗体や実験動物などの購入に使用する予定である。
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