2018 Fiscal Year Research-status Report
マイクロPIXEによる骨髄異形成症候群の血球中微量元素の動態解明と新規治療薬開発
Project/Area Number |
17K09055
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
村上 博和 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (40166260)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠松 哲光 群馬大学, 大学院保健学研究科, 助教 (60737542)
神谷 富裕 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (70370385)
齋藤 貴之 群馬大学, 大学院保健学研究科, 教授 (80375542)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急性骨髄性白血病 / マイクロPIXE / 微量元素 / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.はじめに:急性骨髄性白血病(AML)の病態解明および新たな疾患の病型分類・治療法の開発を目的とし、大気micro-PIXE法を用いた異なる病型のAML細胞内の微量元素の検討を行った。 2.対象と方法:対象はHL-60、KG-1。ドキソルビシン(DXR)を0から200μMの濃度で添加し24時間培養。DXRを0 nM(全細胞)と各IC50濃度850 nM(HL-60)、100μM(KG-1)で添加し、24時間培養。細胞を集細胞遠心装置にてポリカーボネート膜に接着させ、真空蒸着。分析試料を大気micro-PIXE分析チャンバーにてAML細胞内微量元素を解析した。 3.結果:AML細胞株であるHL-60・KG-1ともに、多発性骨髄腫細胞株に比べKのピークが高かった。DXR24時間処理のHL-60では未処理に比べ、Kのピークが低くなっていた。しかし、KG-1ではDXR処理によるKピークの減少は認められなかった。また、Siのピークは一部高くなっていたが、分布を確認したところ細胞全体で高かった。 4.考察:Kは細胞膜のKチャンネルによって細胞内外の恒常性が保たれている。神経や筋以外の非興奮系細胞ではKチャンネルによるKの細胞外への流出は細胞容積を減少させ、マイトジェンの活性化による細胞増殖に働く場合と、アポトーシスが誘発する場合がある。非興奮系細胞のHL-60、KG-1では、Kの流出により細胞増殖と細胞死のどちらが活性化されるかは明らかではない。DXRはDNA複製、RNAの合成、蛋白合成を阻害し腫瘍細胞の増殖を抑制する。本研究でDXRの添加によりHL-60ではK濃度が低下しており、DXRが直接的または間接的にK濃度に影響し細胞死に関与していることが示唆された。一方、KG-1ではK濃度の変化が認められず、AMLの病型または分化段階によりその機序が異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マイクロPIXE法による白血病細胞株における微量元素濃度の測定、および抗腫瘍薬投与による変化の解析法はほぼ完成したが、マイクロPIXE法に使用する機器の稼働率が悪いため、多くの細胞株による検討、および多くの抗腫瘍薬添加による検討が十分行われていない。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 検討細胞株を増やし、MDS細胞株3種(MDS92, MDS-L, SKM-1)、白血病細胞株4種(PL-21, kasumi-1)において細胞内微量元素濃度を解析する。 2. MDS-L細胞は免疫調整役レナリドミドやDNAメチル化阻害薬アザシチジンに対する感受性が高い芽球からなるため、これらの薬剤添加前後における微量元素動態解析を行い、同時にアポトーシス関連分子の変化を解析する。 3. 同意を得たMDS患者10名の治療前の骨髄穿刺液より、CD235a抗体を用いて赤芽球を、CD34抗体を用いて芽球をそれぞれ純化し、マイクロPIXEを用いて微量元素の含量および分布を解析する。MDSの血球減少はアポトーシスに起因するため、同時に、フローサイトメーターによるアネキシンⅤ/PE染色と、RT-PCR 法によるFas, Bcl-2、Bcl-xL, Bax、Bac、Mcl-1 mRNA発現を解析する。 4. マイクロPIXE法に使用する機器の使用回数の増加を量子機構・高崎研究所に依頼する。
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Causes of Carryover |
マイクロPIXE法に使用する機器の稼働率が悪いため、多くの細胞株による検討、および多くの抗腫瘍薬添加による検討が十分行うことができなかったため、試薬等の消耗品の使用が減ったため。
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