2017 Fiscal Year Research-status Report
乳児期の噛み与えによる革新的アレルギー予防法の疫学的研究
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17K09124
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
久保 良美 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (00792988)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲葉 豊 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (00647571)
三木田 直哉 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (60405462)
吉原 重美 獨協医科大学, 医学部, 教授 (80220713)
金澤 伸雄 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (90343227)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | アトピー性皮膚炎 / 噛み与え / 乳児期 / 妊娠期 / 口腔衛生知識 / 母親のアレルギー / ストレス / アレルギー予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
石川県加賀市と栃木県栃木市の2つの地域での小中学生とその保護者を対象とする「噛み与え」についての質問項目を含むアレルギー疾患に関する自記式アンケート調査がスムーズに進み、その全データの入力を終了した。 最初に、加賀市の小学校2校の生徒と保護者を対象にISAAC調査票によるアトピー性皮膚炎症状と各項目の解析を行い、その結果を日本アレルギー学会と小児皮膚科学会で発表することができた。解析の結果、乳児期の噛み与えの開始時期とアトピー性皮膚炎症状の間に有意な関連性が認められ、母親のアレルギー疾患既往歴、妊娠期のストレス、保護者の口腔衛生知識の有無が、アトピー性皮膚炎症状の発症に有意に関連していることが判明した。乳児期の噛み与えの開始時期が早い方が、児童期のアトピー性皮膚炎症状の発症リスクを低下させる可能性が示唆された。噛み与えを行うと、保護者の唾液が乳児の口腔内に入り、口腔内微生物の子供への移行が考えられる。乳児期の早期(0-6 ヶ月) においては、唾液による免疫刺激が、アトピー性皮膚炎症状の発症に関して、乳児の未完成の免疫システムに予防的に働く可能性が示唆された。母親のアレルギー疾患既往歴があると子供のアトピー性皮膚炎症状の発症リスクが増加し、また妊娠期のストレスを少なくすることが、胎児の遺伝子レベルでのアトピー性皮膚炎発症に予防的に働く可能性が示唆された。更に、衛生仮説に関連して、保護者が口腔衛生知識を持ち、乳児期の唾液接触を避け、清潔すぎる口腔状態にすることが、アトピー性皮膚炎の発症リスク増加に繋がる可能性が示唆された。これらの結果についての小児皮膚アレルギー学会における発表で、最優秀演題賞を受賞した。部分的な結果ではあるが、今後のアレルギー予防法の開発に繋がる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
加賀市、栃木市の小中学生学校の皆様と栃木市の教育委員会様のご協力により、2つの地域でのアンケート調査がスムーズに終了することができた。更に、全てのデータ入力も順調に完了することができた。一部のデータを使っての解析も進み、部分的ではあるが、結果を学会発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
加賀市と栃木市の2つの地域での小中学生とその保護者の全データの英語バージョンも作成し、ハーバード大学の教授と共同で、詳しく分析し、結果を比較し、乳児期の「噛み与え」による唾液接触とアレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎の発症リスクについての関連性を調べる。更にアレルギー疾患発症に関連する他の項目についての解析も行い、アレルギー疾患の原因の究明とアレルギー予防法の開発に繋げていく。日本皮膚科学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会で解析結果の発表をする。また、英文で論文を作成し、海外ジャーナルに投稿する。 妊娠期や免疫システムの未完成な乳児期に焦点を当て、衛生仮説や腸内細菌叢による免疫に着目し、詳しい解析から、革新的なアレルギー予防法開発に繋がるよう研究を進める。
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Causes of Carryover |
共同研究者と学校教育委員会、対象小中学校の皆様の熱心なご協力により、アンケート調査をスムーズに進めることができ、データ入力を予定より早くスタートし、完了することができた。このことにより、平成30年度に支払い予定であった2つの地域でのアンケート調査データ入力費用の支払いを平成29年度中に行う必要ができ、前倒し支払請求させて頂いたため。 平成30年度の使用計画は、全データについて様々な観点から解析を進め、その研究結果を順次学会発表するとともに、関連する学会に出席して、関連する最新情報の収集を行う。共同研究者のハーバード大学のCamargo先生とも適宜情報交換しつつ、まとまった成果について英語で論文を執筆し、英文校正を受け、海外ジャーナルに投稿するために使用させて頂く計画である。
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Research Products
(2 results)