2020 Fiscal Year Research-status Report
直接導入型タンデム質量分析計による薬毒物迅速検査システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
17K09285
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
井上 博之 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (40159992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 康雄 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (10154668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬毒物 / 社会医学 / 法中毒学 / 質量分析 / スクリーニング / 血液 / 乱用薬物 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HS-GC)による揮発性物質の測定:直接導入型質量分析計による揮発性物質の測定を補完するため、ナローボアキャピラリーカラムを装填したHS-GCによる測定法の構築を試みた。 HSバイアルに測定試料0.1 mL及び内部標準溶液(0.1% t-ブタノール水溶液)0.1 mLを入れ、直ちに密封した。分析カラムとして、ナローボアカラム(Rtx-624、内径0.18 mm×20 m)を用いた。バイアル内での気液平衡状態に達する最適条件を検討し、バイアル保温条件を65℃、5分に設定した。全6成分は2分以内に分離され、各ピークの保持時間及び面積値の繰り返し再現性は良好であった。エタノール濃度0.04-4 mg/mLの範囲で良好な直線性を示すとともに1サイクル10分で測定可能であった。その他のアルコール類も同様な結果であり、揮発性物質の迅速測定法として有用であると考えられた。 化学兵器の測定:フーリエ変換赤外分光(FT-IR)毒性ガス検知器(MKS AIRGARD)を用い、化学兵器の検知性能を評価した。周囲空気で希釈・調製したサリン蒸気のFT-IRスペクトルには、バックグラウンド処理が不完全であったことによる二酸化炭素と水の吸収帯が認められたが、特徴的な指紋領域(700~1400 cm-1)と2950 cm-1付近の吸収帯が観察できた。希釈したサリン(0.44mg/m3以上)を含むn-ヘキサン蒸気に対して、装置はGB検出のアラームを出した。ソマン、タブン、シクロヘキシルサリン、VX及びRVXの蒸気に対しては、正しいアラームを出したが、FT-IRスペクトルはサリンのそれと類似していた。マスタードガス、窒素マスタード3、ルイサイト1、塩化シアン、ホスゲンは、正しいアラームを出した。本システムは一定の制約のもと、化学兵器検知器として有用であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
理由:研究協力者が所属する企業との共同研究契約の締結に時間がかかり、今年度中に測定装置を設置することができなかった。また、コロナ禍の状況下で企業の実験施設へ出張することもできず、直接導入型タンデム質量分析計を用いた実験データを取得することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
共同研究契約はすでに締結されており、測定装置を移設・稼働するのに必要な器具類の調達やヘリウムガスボンベの設置も完了している。次年度の早い段階で装置を実験室に搬入し、実験を再開する予定である。 まず、シアン及びアジ化物を対象物質とする。アルカリ水溶液中のシアンイオン及びアジ化物イオンは、負イオン測定モードで検出可能であるが、高感度化のための諸条件を最適化する。次に、対象物質を自動判定するためのターゲットイオンの選定及びアルゴリズムを構築し、装置に組み込む。生体試料(薬毒物添加試料)を測定し、自動検知の可否及び調整を行う。生体試料に有機溶媒等を添加して除タンパクした後の試料を測定し、生体試料に由来する夾雑物質による影響を評価する。また、中毒事案の多い農薬(有機リン系、カルバメート系等)や向精神薬について、対象物質を自動判定するための実験を行い、総括する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で十分な実験研究ができなかったため、研究期間を延長し、次年度執行することとした。
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