2021 Fiscal Year Research-status Report
直接導入型タンデム質量分析計による薬毒物迅速検査システムの構築に関する研究
Project/Area Number |
17K09285
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
井上 博之 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (40159992)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 康雄 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学研究センター, グループディレクター (10154668)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 社会医学 / 法中毒学 / 質量分析 / スクリーニング / 薬毒物 / 農薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
LC-MS/MSを用いた有機リン系およびカルバメート系農薬の迅速測定法の開発: 【方法】有機リン系農薬としてフェニトロチオン、アセフェート、ジクロルボスなど16種類、カルバメート系農薬については、メソミルおよびカルバリルを分析対象化合物とした。2 mL容マイクロチューブに血液試料を分取し、精製水およびアセトニトリル(内部標準品としてフェニトロチオン-d6を含有)を加えて振とう混和し、遠心後の上清を測定用試料とした。LC-MS/MSは、QTRAP 5500を用い、分析カラムにはL-column2 ODS、移動相として10 mM ギ酸アンモニウム-メタノール系を用いた。 【結果と考察】各化合物の血液からの回収率(0.1 ug/mL添加)は、ジクロルボス(72%)およびクロルピリホス(83%)を除き88%以上であった。検出下限はフェニトロチオンおよびサリチオンについては0.04 ug/mLであったが、それ以外の化合物については0.001~0.004 ug/mLであり、いずれも4 ug/mLまで良好な直線性を示した。本法はアセトニトリルによる除タンパクのみの簡単な前処理で血液中の主要有機リン系およびカルバメート系農薬をスクリーニング可能であり、法医実務に適用可能であると考えられた。 逆流型大気圧化学イオン化質量分析装置を用いた農薬類の検知に関する研究: 直接導入型タンデム質量分析計を用いてフェニトロチオン、メソミル、カルバリルおよびクロルフェナピルの測定条件を最適化した。化合物イオンの出現は極めて短時間(数秒以内)であり、現在の加熱脱着温度250℃を下げて測定する等の改良が必要と考えられた。現時点での検出下限は、導入絶対量として50~500 ng程度であった。今後、自動判定に向けたアルゴリズムの構築を目指す予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究協力者が所属する企業との共同研究契約の締結に時間がかかり、直接導入型質量分析装置の設置と実験研究の開始が大幅にずれ込んだ。また、コロナ禍で研究協力者が出張できず、本年度中の共同実験は当初予定を大幅に下回った。現在、農薬類の測定条件の最適化を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
中毒事案の多い農薬(有機リン系、カルバメート系等)や向精神薬について、直接導入型質量分析装置での測定条件を最適化する。次に、対象物質を自動判定するためのターゲットイオンの選定およびアルゴリズムを構築し、装置に組み込む。生体試料(薬毒物添加試料)を測定し、自動検知の可否および調整を行う。生体試料に有機溶媒等を添加して除タンパクした後の試料を測定し、生体試料に由来する夾雑物質による影響を評価する。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で十分な実験研究ができなかったため、研究期間を延長し、次年度執行することとした。一部、研究成果発表費用に充当する予定である。
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