2017 Fiscal Year Research-status Report
心室細動の駆動源ローターの特性とその安定化に寄与する電気生理学的機序の解明
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17K09511
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
辻 幸臣 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 講師 (60432217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 正俊 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (30627328)
本荘 晴朗 名古屋大学, 環境医学研究所, 准教授 (70262912)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 電気的ストーム / トルサード・ド・ポアンツ / 遅延ナトリウム電流 |
Outline of Annual Research Achievements |
渦巻き型旋回興奮波(ローター)は、さまよい運動特性をもつ興奮波で、心臓突然死を引き起こす心室頻拍や心室細動(VF)の発生に重要な役割を果たすと考えられている。しかし、ローターの動態特性の詳細は未だ明らかにされていない。QT延長症候群は、特有な心電図波形を示す非持続性多型性心室頻拍Torsades de Pointes(TdP)からVFへ移行する心臓突然死疾患である。我々は当該年度、QT延長症候群に類似した電気生理学特徴を有する電気的ストーム家兎モデルを用いて、TdPやVFの興奮伝播様式を高分解能光学マッピングで解析した。TdPとVFは共に、ローターによって維持されていること、各々が特徴的な興奮伝播様式を呈することを観察した(未発表のため詳細は割愛)。その旋回興奮頻度は、TdPでは6~7Hz、VFでは9Hzであった。さらに、このモデル動物の催不整脈基質に、遅延Na+電流が重要な役割を果たしていることを見出した。パッチクランプ法にて単離心室筋細胞のNa+電流を記録したところ、モデル動物では健常家兎コントロールに比し、その遅延成分(遅延Na+電流密度)が有意に大であった。Na+電流のピーク成分には変化は無かった。心室筋組織では、自己リン酸化カルモジュリンキナーゼII(CaMKII)や酸化CaMKIIの発現が両者ともに増加しており、CaMKIIの著しい活性亢進が示唆された。CaMKIIによる重要なリン酸化標的部位であるNa+チャネルαサブユニットNaV1.5 Ser571が過リン酸化状態であることを検証した。さらに、生体位心・摘出灌流心・単離心室筋細胞を用いた実験にて、ranolazineやlidocaineによる遅延Na+電流阻害が、基質の改善、催不整脈性の抑制に有効であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験計画の実施が遅延している主な理由として、電気的ストーム家兎モデルの作成・準備に少なくとも3か月という長い期間を要すること、経過観察中に除細動不全による死亡など、実験プロトコールから脱落する家兎が少なくないことが挙げられる。また、モデル動物の作成、経過観察、実験を長崎大学と名古屋大学とで行っているが、どちらともマンパワーが絶対的に不足しており、研究課題の進捗は遅延せざるを得ない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、研究課題の遂行を効率的にするための人的補助が得られる見込みは少ない。代表者・分担者ともにエフォートを上げ、モデル動物の作成数を増やすことで、達成度の遅れを取り戻すよう取り組んでいく。
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Research Products
(7 results)