2018 Fiscal Year Research-status Report
糖代謝を悪化させる腸内細菌由来代謝産物の特定とそのメカニズムの解明
Project/Area Number |
17K09821
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
藤坂 志帆 富山大学, 附属病院, 助教 (30512082)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸辺 一之 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (30251242)
薄井 勲 獨協医科大学, 医学部, 教授 (50377272)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 腸内細菌 / 肥満 / 糖代謝異常 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満や便秘の治療に用いる漢方薬である防風通聖散が抗肥満作用を示すメカニズムとしては従来、褐色脂肪組織の活性化による基礎代謝の亢進が示唆されていた。前年度の研究において我々は、高脂肪食負荷マウスにおいて、防風通聖散が腸内細菌叢を変化させ、とくにAkkermansiaといわれる細菌の増加により肥満により低下した腸管のバリア機能が回復することを見出していた。その結果、肥満した個体の腸内細菌由来エンドトキシンが血中に流入した高エンドトキシン血症が軽減し、慢性炎症や糖代謝が改善することがわかった。 その他のメカニズムとして、菌叢の変化が腸内細菌由来代謝産物を変化させて代謝改善に寄与するのではないかと考え、防風通聖散投与マウス糞便の標的メタボローム解析を行った。しかし短鎖脂肪酸などの代表的腸内細菌由来代謝産物については変化がなかった。防風通聖散による糖代謝の改善は、腸管バリア機能の回復による高エンドトキシン血症の軽減とそれに伴う慢性炎症の改善によると結論づけ、現在論文を作成している。 近年、すでに上市されている様々な薬剤が腸内細菌組成に変化を与えることが報告されている。本研究もこれまで臨床利用されていた薬剤の腸内細菌叢を介した代謝への作用を明らかにしたものである。このような薬剤の多面的作用を理解することは、病態に合わせた治療薬選択に広がりを与え、様々な疾患の領域においても応用しうる有意義な発見であったと考えらえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的の一つである「糖代謝を悪化させる代謝産物の特定という」という意味では、2018年にCell Reports誌に論文発表することができた。また、防風通聖散による腸内細菌の変化を介した代謝改善作用のメカニズムとして、腸内細菌由来代謝産物の変化を検討したが、おもな代謝産物には変化が見られなかった。その後の検討で腸内細菌の変化による腸管上皮のtight junction強化によるバリア機能改善というメカニズムを見出すことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
防風通聖散の腸内細菌叢を介した代謝改善作用については現在論文執筆中であり、revise実験が次年度に必要となると考えられる。
|
Causes of Carryover |
代謝産物を測定を外注ではなく共同研究で行ったため、および見積額と実際の納入金額との差額もあったため。この残額は次年度の物品購入に充てる。
|
Research Products
(7 results)